僕は二次元の出身だが、三次元のある男の記憶を全て保有している。要するに二次元上に再現された彼のレプリカ、クローンに近い。
まあいろいろあって僕のオリジナルはこちらに来て冒険し世界を救って死に、僕はオリジナルとして三次元に出向くことになった。
オリジナルの仲間も、今や殆どがレプリカになりかわっていた。三次元に行くことも、オリジナルとして生きることも僕らにとっては憧れだった。
ところで、レプリカといえどオリジナルと全く同じという訳ではない。僕の場合一番違うのは性別だった。僕はオリジナルとほぼ同じメンタルを保有しており、つまり僕の心は男で、体は女だった。
しかし、それを乗り越えて僕には今恋人がいる。彼女はオリジナルの仲間だったある娘のレプリカだったが、記憶を失くしてしまっていた。感情が多少読み取りにくいが、黒髪のかわいい娘だ。彼女のオリジナルもまた僕のオリジナルと共に死んでいた。(オリジナル同士も、どうやら惹かれあっていたようだ)
乗り越えた悩みとはなんだったのか、三次元に来た僕は完全な男になっていた。彼女や仲間たちもそれを喜んでくれた。
僕はみんなを連れて僕の家に帰ることにした。実際に行ったことはないけれど、オリジナルが知っていることは何でも知っている。あれだよと指差すと彼女はふしぎな形の家ねとかわいらしく微笑んだ。三次元の記憶がない彼女は、日本家屋を見慣れないのだろう。
家に着くと母さんが待っていてくれた。殆どの三次元の人間は僕らのことを知らない。ああごめんなさい母さん。あなたが産んだのはこの僕じゃないんだ。良心の呵責がない訳ではなかったが、僕は悪いことは何もしてないはずだ。
僕は母さんに、彼女を未来の妻だと紹介した。そして、仲間たちに証人になってくれるよう頼み、その場で彼女にプロポーズした。性別という問題がなくなった今、僕らを阻むものはもうないと思ったからだ。彼女は頷き、僕は彼女を抱きしめた。
再三になるが、彼女には記憶がないから、家がわからないらしい。オリジナルの名前は分かっていたから、調べがつくまでうちにいればいいと僕は言った。どうせ少しすれば一緒に住むのだし。
僕は彼女に家を案内し、設備の使い方を教えた。部屋は余っていたから好きなのを使うといいと言ったら、僕と同じ部屋がいいと言う。僕は趣味でとても狭い部屋を使っていたから、二人で使えるような部屋に引っ越すことにした。