小説家を志す少女が、自分には悲劇的な体験が少なすぎると祖母に零す。
祖母はそれを喫茶店のマスターに相談する。マスターは祖母に二階へ行くように言う。
二階に行くと少女が色とりどりのマスキングテープで首を吊ろうとしている。祖母はテープを切り、少女の頬を叩いた。
「あんた、悲劇的な体験なんてねえ、これからいくらでもするんだから。嫌でもするんだから。あんたには想像力もあるでしょう。体験なんかに頼らないで、想像力を使いなさい。画家が見たことのないものを描くみたいに。体験したことがなくったって、書くことはできるの」