道路の横の道を自転車で走っている。道路を渡り来た方向に戻ると、自分の考えた人物が実体化するのだ。
交差点まで戻ると、わたしは4人の実体化に成功した。その4人を手駒として、チェスのようなゲームが始まった。
相手は何者かよくわからなかったが、うちリーダー格の一人は色っぽい大人の女性の姿をしていた。彼女はわたしが実体化させたうちの最も強い魔法使いの弟子で、彼を愛し、同時に深く憎んでいた。
ゲームは私の魔法使いと敵の女性の一騎打ちになり、二人は本来の姿に戻って戦った。やがて女性の大技によりわたしの魔法使いは彼女の作る波に呑まれてしまった。しかし魔法使いはそれを内側から破り、二人は人間の姿に戻った。魔法使いは女性を抱きしめて、耳元で何か囁いた。女性は頷きながら涙を流した。
「いい抱き心地だ。よく化けてるね」「もう、先生たら」
とかなんとか、和やかムードになり、女性は霧のように消えた。
魔法使いはわたしの中に戻っていった……というか、知らないうちに魔法使いに体を乗っ取られていたらしく、わたしは体のコントロールを取り戻した。悲しいような嬉しいような気持ちと、戦いによってずぶ濡れになったシャツがわたしに残されていた。
あまりに濡れて重いものだから、泳いで帰ることにした。道路は水浸しで、泳げる程度の深さがあった。
公園に泳ぎ入ると、何組かの親子が砂遊びをしていた。その中の一人に見覚えがあり、声をかけると妹だった。
今は2029年で、わたしは何年も行方不明になっていたらしい。
姪はポニョっぽかった。ひとしきり再会を喜んだあと、わたしはとりあえず服をどうにかしたいので家に帰りたいと言った。
ここは前に住んでいた場所の近くの公園だ。今は××に住んでるんだよね、と訊くと、妹は違う、今は寮に住んでいるのだと言う。道がわからないので妹について歩いていくことにする。
前から父がやってきて、姪を肩車した。わたしが曖昧に微笑むと、父は「どうも」と軽く頭を下げた。わたしがわからないのだ。