プールで浮いていると、体調の悪そうな政治家が三人の側近に運ばれるようにしてやってくる。側近は政治家に死んでほしいらしく、いつも無茶をさせている。
今回も政治家は救急車に乗せられて行った。しかし救急隊員や運ばれた先の医者もグルなのだ。
これは許せない、と思ったワトソン博士は救急車の鍵を盗み出し、政治家を独断で治療しようとする。いざ実行しようとした時、ホームズがワトソンを玄関で呼び止める。
「もう行かないと、ホームズ、一刻を争うんだ」
「いいから、ほんの少しだけ待ってくれ」
バルコニー風の玄関からは、また救急車に政治家が乗せられそうになっているのが見える。もう待っていられない、と階段を降りようとすると、ホームズが玄関に出てくる。
「……よし、これを掴め。96秒数えたら手を離すんだ、いいな」
無理やり棒状のものを掴まされ、バルコニーから突き落とされる。いつの間にか2階だったはずのバルコニーは非常に高い場所にあり、ワトソンはターザンロープかジップラインのような調子でワイヤーを滑り落ちていくのだった。
何秒もしないうちに分かった。
ホームズは自分が何をしようとしているのか察して、犯罪を犯さないように逃したのだ。
「救急車の鍵は君がスッたのではなく、担当者が落としたんだ」
「それでもホームズ、僕は医者としてあの政治家を助けたかったよ」