私は一人の戦士として、日々鍛錬を行っている。ここでは誰も王の娘として扱う者はなく、私も身分を気にすることなく過ごしていた。
ある日、私たちに召集がかかった。改まってなんなのかと思っていると、王が親衛隊を引き連れてやってきた。王は国宝である剣を地面に突き立てて言った。
「わたしは退位を決めた。我が娘を後継に指名する」
私はパニックになって、友人たちが引き止めるのを振り払って逃げた。
落ち着いてくると、戻らなくてはまずいのではないかという気持ちが大きくなった。兄ではなく私を後継者にするというのは、何か理由があるのではないか。友人たちも追いついてきて、俺たちが親衛隊になってやんよとか、今すぐ王さまになるわけじゃないしとか、逃げるなら手を貸すとか、口々に私を落ち着けようとしてくれた。まだ少し興奮していたが、私は友人たちを連れて王のところへ駆け戻った。
王は城に引っ込んでいて、バルコニーからこちらを見下ろしていた。
私は地面に刺さったままの宝剣に走り寄り、王に背を向け、騎士たちが並ぶ方を向いた。それを抜き放ち、くるりと回してから、刃を心臓の前に構えた左手の甲に当てた。それを見た騎士たちが慌てて私に続く。これはこの国の騎士たちが典礼などの際に行う儀式の、最初の姿勢だ。
「我が○○○○○!」
私が決められたとおりの台詞を言うと、
「我が○○○○○!」
と、騎士たちが復唱する。
今度は剣を半回転させ、左手のひらで柄を叩く。今度は騎士たちも同じタイミングだ。
「○○○○○!」
「○○○○○!」
剣を持ち直し、地面に突き立て両手を柄に預ける。騎士たちは跪き、私は立ったまま台詞を言う。
「○○○○○!」
「○○○○○!」
そして私は再び剣を抜き、天に掲げる。
「○○○○○!」
これで儀式は終わりだ。剣を納める音が辺りに響き、歓声が上がる。
鞘がないので剣を持て余したまま、振り返って王を仰ぎ見る。王は笑いもせず頷いた。私は、王にも騎士たちにも、どうにか認められたようだった。