私は本屋(書店)が好きだ。というより本がたくさん並んだ空間が好きだ。だからもちろん図書館も好き。訪れるとまだ読んだこともなければタイトルも知らない本がずらりとあって、まだ出会ってない本がこんなにある!という希望ともう自分の一生をかけてもここにある本を読み切ることはできないのだ…という絶望がある。そんな希望と絶望を同時に味わえるあの空間が好き
書店は基本的にどれも新品だ。並ぶカラフルなコミックもきらびやかなハードカバーも手に取りやすいサイズの文庫も、そこにあるだけできらきらしていて旬の果物みたいだなって思う。陳列しているのを見るだけでワクワクする気持ちにもなる
経産省が「売れる本屋」のためのチームを設置するらしいけど、ニュースを読んでも書店が激減することの何に対して危機感を持っているのかよくわからなかった。本を読む人が少なくなるとか?そういうことも書いてない。書店が少なくなることでどういう影響が出ることを危ぶんでいるんだろう
Twitterでは蔦屋書店みたいなことをするのでは?と不安視する声がたくさんある。特にカフェを作ることで購入前の本をカフェで読むにあたり汚れるものを購入することになるのではないかとか懸念点ばかりが話題になっている気がする
個人的に一番大事なのはやはり書店へ行き、ふらふらし、「おお、これは」と思った本をせめて単行本1~2冊、文庫本なら3冊ぐらいはぽんと何も考えず気軽に買えてしまうような時間とお金を客側に与えるのが効果があると思う
私が利用している図書館、貸出はさすがに足を運ぶ必要があるんだけど本の予約とか貸出延長はネットでできるんですよ。それでネットで本の予約ランキングとか出してるんだけど今調べてみたら、やっぱり最新作が並ぶんだよね
彷徨う者たち/中山七里 -- NHK出版 -- 2024.1
風に立つ/柚月 裕子 -- 中央公論新社 -- 2024.1
ブラック・ショーマンと覚醒する女たち/東野 圭吾 -- 光文社 -- 2024.1
ほら!名作ベストセラーじゃなくて新しい本が並ぶ。そりゃ当たり前な部分もあるけど、最新作を買えるお金があれば借りずにいたっていう人も確実に存在するわけで。やっぱり本を買って読むお金と時間じゃないかなあ
書店、とりわけ本についてはみんなけっこう夢見がちだよなあと思う。書店はこうあってほしい、こうあるべきみたいな姿があってそこから外れていると避難されがち。蔦屋書店やカフェ云々以前にブックカフェという業態はこの世にすでに存在していて個人経営の店でも営業しているところは全然ある。これは私の住まいの地域にやたらとブックカフェがあるからかもしれんが
蔦屋書店をやたらとこき下ろしてるの、たぶん生活圏に蔦屋書店”以外”の書店の選択肢がある人たちなんだろうと思うし自分の思う”書店”以外は書店と認めないの、およしよしなご身分やねえ~とチクチクした気持ちになる。蔦屋書店でも書店ができたことに対して喜ぶ人はいるでしょうに
難しいなと思うのはこういう本を読んでたらかっけえ!っていう背伸びで本を読むことはいいことだとしどんどんやってほしいと思うけど、同時に本をあまり高尚なイメージだけに留めてほしくないなと思う。憧憬はそこに自分を連れていきたいという引力が働くけど高尚で手が届かないというのは自分を遠ざけてしまうから
夏目漱石読めたらかっけえ!も暇つぶしに東野圭吾読むかーも全然いい。もちろんラノベだって本だし。『「若者の読書離れ」というウソ』では若い子は本を読まなくなってきているというデータはなく、それは大人が思う”読書にふさわしい本”を若者が読まなくなってきているという内容があって、こういう読書とか本への凝り固まったイメージがハードルになっているような気がしないでもない…何読んだっていいんだぜ
あとこれもいつだったか書いたけど、本を読む行為ってかなりマッチョな行為。自分から本を持って、字を追って、それを想像したり考えたりして咀嚼して飲み込む。もちろん斜め読みしたっていいんだけど、本を読むことはかなり能動的なもので想像以上にパワフルなのである。映画やドラマでいうところの流し見みたいなものがしづらいのってけっこうキツい人が多いんじゃないか。斜め読みだってスマホをいじりながら字を追うことって基本できないし
読書好きな人は読書がマッチョなものであるという視点を置き去りにしがちなのよね。Audible的なものとかがもっと大きいジャンルになってくれれば自分から字を追うことがキツい人でもただ流れてくる音声を聞くことで本を楽しめたりしないかなーと思う
私は書店が好きなのでなくなってほしくないし増えてほしいけど、やっぱり書店側の努力だけじゃどうにもならないし、むしろ今でもなお経営している書店ってこれまでの波を超えてきているわけだから経営のノウハウは経産省のチームよりもよっぽどあると思う。書店なんて地域性に左右されるものだし。ビジネス街と学生街と住宅街だと多少ラインナップも変わるものでは。その辺をうまくやってきて今も続いているのだと思う。ゴールデンカムイの土方歳三じゃないけど、今ある書店はまさに『生き残り』だと思えってことなんだろうなー
多種多様なコンセプトの本屋さんがあっていいし、それを実現するためには書店へ行く側にお金と時間が必要不可欠なんだよね
とりあえず書店を応援するつもりなら石川県珠洲市の被災した書店をまずは助けて差し上げろ、じゃないと筋が通らんでしょうが