死ねばいいのに『死ねばいいのに/京極夏彦』

amy
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おっかなびっくりでこの記事を読んでくれている方は安心してほしい。京極夏彦の小説のタイトルである。最近読んだので感想を記しておきたい

この本は自宅マンションで何者かによって殺された鹿島亜佐美について、鹿島亜佐美と生前に関わりがあった職場の人や家族、マンションの住人のもとをとある男が訪ね、彼女のことを聞いて回るという連作短編小説になっている

全部で6つの短編が収録されており、つまり6人の人物がとある男から鹿島亜佐美のことを聞かれ、最後になぜ彼女が死んだのかが紐解かれるという話だ。短編それぞれで視点が異なる。訪ねてこられる側、つまり鹿島亜佐美と関わりがあった側がとある男に鹿島亜佐美のことを聞かれ、自分が彼女に対してどういう印象を持っていたか、どういう人物だと思っていたかを聞かれる

小説の種類で言えばミステリーに部類されるのだろうか。人が殺され、その殺した人物が明らかになる、という意味ではミステリーに入るかもしれないけれど、謎を解決してすっきりした!とは決してならない

読んでいて思ったことは、人は自分のことについて語るよりも、誰かについて語るときのほうがその人自身の価値観や倫理観が浮き彫りになる

好きなものが同じよりも嫌いなものが同じほうがいい、という言説が友人や恋人選びの際に用いられることがあるが、それと似たような視点だと思う

友人、家族、同僚、恋人。もちろん全方位欠点がない人間はいないわけだけれど人間のどの部分を好ましくないと思うか、欠点とするかでその人がどういうまなざしで他人をジャッジしているかが見えてくる

容赦のない他人へのまなざしを語ったとき、翻って自分にもその容赦のないまなざしが向けられる。そのとき人はどうなるか、どうすればいいのか

そんな小説だった(ネタバレを避けるとふんわりとした感想しか書けん!)

@amy
リプトンより日東紅茶派。Twitter→@note1581 Bluesky→bsky.app/profile/amy1581.bsky.social Wavebox→wavebox.me/wave/4pcj26ik98hvnx73