読むのを楽しみにしてた。好きな書き手の人が私が好きな料理をつくることをテーマにアンソロジーって…!
いやー、どれもおもしろかった。ほんとに。さすがでございます…

西條奈加さんの『向日葵の少女』は舞台設定で上品が雰囲気が漂いながらもミステリーっぽい話の進み具合で、大きなテーマを複数かけあわせてまとまったひとつの話にできるのすごすぎるし結末には心があたたかくなった
千早茜さんの『白い食卓』は主人公がいけ好かないやつすぎるのだけど話が進んでいくごとに料理の恐ろしさというか、食事を他者に委ねることってそういうことだよなあ…生きるための手段のひとつを他者へ委ねるというのは尊いとされたり愛情の証左とされたりもするけれど、それは反転させるとどういうことなんだろうね?と冷たいナイフみたいな展開だった。世にも奇妙な物語で見たい
深緑野分さんのはNetflixとかで短編ドラマにしてほしい感じ。ちょっとファンタジーな設定と描写が海外ドラマぽかったしデイジーなすごいかわいくて胸がきゅんとした。その後とかないんですか?続きを読みたいんですが…?
秋永真琴さんの『冷蔵庫で待ってる』は北海道の大学生の女の子の話なんだけど、大学生のときの恋愛ってこういうところがあるよなあ、拙くてでも熱量だけはすごくあって、相手に求められたいということは実は何より相手を求めていて、恋愛感情と承認欲求もごちゃごちゃになりがちで…。自分の楽しみのために料理をするというのは自分が食べたいもの、シグナルをちゃんとキャッチしなければいけないわけである種の自己分析とも通じるところもあって、主人公が自己理解を深めてささやかながらも主体的な選択をしたところがすごいよかったし、ビールとおつまみの描写がよすぎて出てきたビール会社は何かしら広報のお礼をする必要があるんでは?ぐらいだったな。ちなみにこの話を読んだあとチヂミを作りました
織守きょうやさんのこの曇天っぽい空気が満ちた小説ってほんといいよな…。マジで…。話が進むにつれてある秘密が明らかになるのだけど、ほんとに誰にも苦しさを言えないときってああいう選択肢になっちゃうし、料理を作ることに愛情を込めたとしても伝わらないとかやるせないことになったりもして
どうにもならない苦しみをとりあえず持ち帰ってどうにかしていこうというささやかな希望もあるのが最終的にやさしくていいなと思った
越谷オサムさんの『夏のキッチン』越谷さんの文章ってほんとにリズミカルで登場人物が愛くるしくていい。とあることをきっかけに不登校になった来年中学生になる男の子の振る舞いを書くのがうますぎるし、出不精な自分はコンビニに行くか悩むところでめちゃめちゃ共感した。越谷オサムさん『ひだまりの彼女』もそうだけどあったかくて笑えて一匙の切なさと寂しさを加えた話が抜群にうまい…ほんとすごい…
うう、どのお話もすっごいおもしろかったし同一テーマでこれだけ全然違う話が集まるんだから作家ってのはすごい…
自分だったら料理をテーマに何を書くかなあと思ったけど、コンビニや外食で店員さんとちょっとした会話すらしたくない消極的料理の話になるかな…