『行こう、未来へと行こう』(バクチク現象2023)

anisaxis
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公開:2023/12/31

『バクチク現象2023』、行ってきました。

開場前の武道館は、今まで感じたことのない空気に満ちてた。いつもなら会場前の広場には、やったーライブだ! BUCK-TICKに会えるよ! って高揚感に満ちてるのに、今回は躊躇ったような、諦念──でもないな、重すぎないけど、はしゃぐことに迷ってる空気があった。

そりゃあ、お友達と会えて楽しそうに笑ってたりする人もいる。でも、いつものあの、その場にいるだけで気持ちが浮き立つような軽やかさがない。足を踏み入れたときの空気が、違ってた。

どうしよう。ここにいていいのかな。迷子みたいな顔をした人がたくさんいた。途方に暮れて、自分の居場所を見つけ損ねているような空気を纏っていた。たぶん私も、その一人だった。

開場して中に入っても、やっぱり戸惑ってるような空気があって、それなのにお互い知らない者同士で労り合うような、不思議なくらいやわらかな空気があった。袖すり合うも多生の縁。だったら、この狭い会場で袖どころか腕も肩もぶつかりながら、おんなじ人たちが大好きな人同士なんだから、そりゃあ多少でも多生でも縁だよね。そんなことを考えてた。

始まっても、やっぱりぎこちなかったと思う。今井さんの「さあ、始めるぜ!」の掛け声で会場は沸いても、曲が進んでも、歓声や精一杯の拍手に満ちても、四人の顔も表情も硬く感じて、吸引力はいつもどおりのはずなのに、マイクを、録音を通したあっちゃんの声も聞こえるのに、映像であっちゃんも見えるのに、重い塊が内臓の奥にあった。『Go-Go B-T TRAIN』で腕を振り上げても、『Future Song』で泣きながら今井さんとヒデの名前を叫んでも、どうしようかな、楽しんでいいのかな。ずっと考えてた。これが「最後」なのかな。少なくとも私は思ってた。「さあ、始めよう──」。あっちゃんのいない人生を、四人もファンもばらばらで「始めよう」。そういう意味を含んでいるのかもしれない。それも前向きな人生だ。選択だ。死んだ人は帰ってこない。思い出も大事。あなたの、あなたたちの、これから先の人生も大事。餞みたいに、今日のライブを渡されるのかなって思ってた。

空気が変わったのは、ISSAYさんも一緒の『愛しのロックスター』から『さくら』かな。『さくら』のとき、天井にまでいっぱいの桜の花びらが満ちた。最初気づいていなくて、前の座席の人がお連れさんに「あれ、上」って指差してたのに目を向けた。透きとおった桜が、暗い武道館の天井で揺れてた。あちこちからすすり泣く声も聞こえた。涙を拭うのも見た。

ステージでは演奏が続く。四人がいる。最初からずっと、真ん中はスポットライトが射し続ける。──あれ、これ、悲しんでいいんじゃない? 泣けって云われてない? いや泣くだろ。泣いていいんでしょ。あっちゃんの名前を、それまで「頑張れ」って意味で叫んでた四人の名前じゃなくて、あっちゃんの名前だけを叫んだ。呼んでいいよって云われた気がした。

MCでユータが最初に喋り出したとき、ああやっぱり、これで「終わり」なんだ。そう思った。「続けていきます」に、そうか、四人か、って。「BUCK-TICKはずっと五人です」に、心臓が跳ねた。アニイが「やめた方がいいのか、考えました」って、でも「第二期」って云った。ヒデが「不安だったよね」って云ってくれたとき、そうだよね、あなたたちもねって思った。「パレードは続きます」って二回云った! 今井さんが「あっちゃんは死んじゃったけど」って、云い切った。……云うのか。そりゃそうだけど。「泣いてもいいけど、苦しまないで下さい」「存在していたことを大事にして下さい」──誰よりも泣いただろうし、苦しんだだろうし、大事に思ってるだろう今井さんが、四人が云うのか。こうやってファンの前で云うてくれるんだ。パレードは続くんだ。五人一緒に。五人でBUCK-TICKだから。

続くんだよ。

最高のライブでした。追悼でもなく、餞でも、ファンへのお礼だけでもなく、ひたすらに、がむしゃらに「進む」ための意思表明と決意の場だった。

四人がモノクロ+あっちゃんがカラーだった映像は、途中からは五人全員がカラーになって、ああ、ぜんぶ「混ざって、交じった」のかなって思った。あっちゃんはまだそのへんにいます。そうだよねえ。

武道館からの帰り道は、いつものライブ帰りの空気だった。楽しかったねえ。高揚に満ちて、あそこが、あの場面が、って明るい声もたくさん聞こえた。受け取る側の私の感じ方も大きいだろうけど、いろんな人もたくさんいて当たり前なんだけど、笑ってた人はぜったい多かったよ。

武道館からは今までと違うタイミングと泣き方でホテルでも泣いて、帰りのバスでもBUCK-TICKを聴きながら、気がついたら涙ぐんでた。今までが「喪失」起因の激情だとしたら、武道館からは「感情の整理」に向かってるのかなって考えてた。

正直、選択肢の中でいちばん難しいものを選んだと思う。泥臭くずっと現場で「五人」で居続けることを選んだんだね。愛おしいし誇りに思う。今井さんの言葉は、自分たちを鼓舞するものでもあるし、いつ降りても乗ってもいいよ、ここにいるよ、っていうやさしさでもあるんだろうなと思う。

云い続けてきたけど、私は何をどんな形にしようと本人たちの自由だと思ってるし、支持するのも離れるのも、ファンにも選択肢はあると思ってる。

「ついてこいよ!」じゃなく、ユータの「育ててもらった。一緒に行きましょう」、今井さんの「進め!!」という言葉の選び方が、私は大好きです。きっとぜんぶ尊重してくれるだろう。

有難う。大好きです。

どうかこれからも、これまで以上に五人を好きでいさせてね。チラシの裏側の言葉、嬉しかったよ。

楽しかったねえ!

んで、余談。

翌日のコミケで『魅世物小屋が暮れてから』のツアーTシャツ着てる人をお見かけして、思わず声を掛けました。「実は昨日、武道館に行ってまして」「私もです!」って二人して健闘を讃え合って、微笑み合って別れた。

そういう偶然を、喜んで受け入れ合う空気が『バクチク現象2023』には確実にあったよ。最高の思い出を、2023年の最後のさいごに有難う、BUCK-TICKとコミケで会ったお兄さん。

たっっっっっっのしかったねえ、2023年!

@anisaxis
ひとりごとを呟きます。 2023年12月から、猫が大好きで男前で魔王の唯一無二のBUCK-TICKのボーカリストのことを中心に綴っております。そのうちふつうの日記になるといいなと思ってましたが、基本的にはBUCK-TICKのことばっかり呟くページになりました。大好き。