シメジシミュレーションの最終巻が出たので読んだ。これはヤバい。とんでもない傑作だ。
この衝撃が冷め切らないうちに、感想と簡単な作品の紹介とを書き殴っておく。全5巻でそんなに長くもない漫画なので、騙されたと思って全巻一気読みしてほしい。
まずは簡単に、この作品について紹介させてほしい。

シメジシミュレーションは、少女終末旅行の作者のつくみず先生による、2作目の連載作品だ。
いかにも学園もの日常4コマみたいな宣伝文句だが、とんでもない。日常4コマ的なノリは1巻の終わりには既にどこかへ消え去っている。
確かに1巻は(キャラの頭にいろんなものが乗ってたりするものの)日常4コマらしいスタートから始まる。中学のころに色々嫌になって押し入れに籠っていた"しめじちゃん"ことしじまが、外へ出て高校生活を始めるのが最初のシーンである。

しかし、話が進むにつれて徐々にSF的な世界観が見え始め、それに伴って物語のテーマは哲学的な領域へと進んでいく。
詳細はネタバレになるため伏せるが、シメジシミュレーションの描く世界は前作とは真逆で、自由でどこまでも広がっている。巻が進むにつれて加速度的に世界がメチャクチャになっていく展開は十分衝撃的だが、それとは対照的に、しめじちゃん(と我々読者)の視線はどんどん内面的な方向へ向かっていく。

私たちはなぜここにいるのか。内側の"意識"と外側の"世界"が無限に相互作用を起こし、混沌と変化し続けていく中で、私たちを私たちたらしめるものは何なのか。そして私たちはなぜ、その中で他者と関わりを持とうとするのか。
そういった根源的な問いが、しめじちゃんとまじめちゃんの二人の日々と、無数の引用(旧約聖書、古今東西の文学作品、心理学や物理学、位相幾何などなど...)を通じて語られていく。
そうして最後に提示されるのは、我々という"どうしようもない存在"に対して『シメジシミュレーション』が出した一つの答えである。それはあまりにシンプルで、それでいて美しかった。
ネタバレにもなってしまうし、これ以上の言葉はもう不要だろう。まずはとにかく読んでみてほしい。自分たちが何なのかをわからずに生きている我々にとって『シメジシミュレーション』はきっと、その存在を肯定してくれる作品になるだろうから。