緩やかに死んでゆくこと

anone
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何から話せばいいだろう。きっと春になれば私はまた夢を見ます。深呼吸をして、真夜中の玄関をじっと見つめている。私が触れていたものはきちんと愛でしたかと問えば、返ってきたものは鏡写しのような空虚でした。

本を読んでいる。最後のページに差し掛かり文字を大切に拾い上げる。私は今まさに、ひとつの世界と今生の別れを遂げようとしているのだという気持ちになって、大きく息を吸う。読み終えて本を閉じる。2回程撫でて、外していたカバーをつける。

私は、この先出逢うことのないであろう一冊の本の中で淡々と佇む主人公に想いを馳せる。それぞれに生きていよう。孤独な時だけ僕は君の存在を思い知る。きっと、まだ君は待ち続けているから。