目の前が真っ暗になる、という言い回しと、頭が真っ白になる、という言い回しは、限られた場面になるが、かなり似ていると思う。いとこくらいの感覚。言葉はこういった感覚になるからおもしろく、ややこしい。
小学生のころ、漢字のドリルがすごく嫌いだった。特になぞり書き。苦手じゃなくて、嫌いだった。(この間、久しぶりにあの薄い文字をシャープペンシルでなぞる機会があった。そこで判明する。嫌いでもあり、苦手でもあったらしかった。)しかし、人の言葉選びや言い回しには関心があり、幼いながらに「杞憂」という言葉を気に入って、あるときの国語の課題で扱った覚えがあるし、「縦」という漢字の収まりがとても気に入って、繰り返し書くなんてこともしていた。とにかく、幼い頃から言葉に触れることは好んでいたように思う。
私はときたま、ズーカラデルというバンドの曲を聴く。このバンドを季節に形容するなら春だと思う。ノエルという曲も出していたけれど、なんか、ずっと春なんだよね。そう感じるのはきっと、彼らの優しくも力強い音が新芽を連想させるからだ。
私は特に彼らのラブソングが好きで、「ころがる」という曲をひどく気に入っている。「あなたとコンビになりたいわ」と、なんとも聞き馴染みのある入り。初手で私の生活にぴったりと寄り添われ、なんだか悔しくなる。ずるい。もう好きですが?となってしまう。話を戻します。
その曲のサビに、こんなフレーズがある。
「長い睫毛もひどい仕打ちも全部目覚ましくて」
「目覚ましい」…?私はその言葉が気になって仕方がなくなった。早速検索にかけてみる。【1.目が覚めるほどすばらしい。驚くほどすばらしい。2.心外であるさま。気にくわない。】…エ〜〜〜〜。ここで一気に彼らの世界に引き込まれ、思わず携帯から距離を取った。短い言葉でここまで恋情をリアルに表せるフレーズがあることにも驚きだが、この言葉を見つけてラブソングに組み込んだ彼らに脱帽する。この曲に出会った日、またひとつ、言葉の魅力を知った。言葉に恋をするのは、いつでも、どんなときも、いい。