昔、たぶん一度だけ望遠鏡で月を見たことがある。
ワクワクしながらのぞいたら、クレーターがはっきり見えた気がする。
もうずいぶんと前なので、記憶もあやふやになってきているかもしれない。
いつも空で太陽に照らされて光って見える月に、確かに地面があって、クレーターもあった。
昔、アポロ11号が月に行ったらしい。1969年7月21日、ニール・アームストロングが人類で初めて月に降り立ったという。
生まれるずっと前だ。
その月を望遠鏡で見て、見えたことに確かに喜びを覚えた。
同時に月も物質なんだなと思った。望遠鏡でのぞいた月はやっぱりどこか無機質で、頭ではきっと分かっていたのだろうけれど、まだ子供の自分はそこに落胆を覚えた。
落胆を覚えたことに後ろめたさも感じたからか、望遠鏡をのぞいたのはそれきりだ。
だからといって、月が好きじゃないわけじゃない。むしろ、地上から眺める月は昼も夜も美しい。大きな満月に心を動かされるし、昼間の白い月もまた良いものだ。
宇宙に関心がないわけでもない。天文台に憧れている。
これもまた昔のことだけど、しぶんぎ座流星群を見ようと思い立った。
お正月が明けたころに極大を迎える流星群で、思い立ったその日がきっと見るのによい日だったのだと思う。家の外に椅子を持ち出して、コートを着て震えながら空を眺めた。
確かに流れ星を見た。
月も流星群もどちらも好奇心が自分を動かした。見たかったし、知りたかった。
今年は久しぶりに流星群を見てみようか。