中島らも、『今夜、すべてのバーで』を読んだ。わたしは飲酒することが好きで、飲酒文学が好き。『やし酒飲み』や吉行淳之介編の『酔っぱらい読本』、『アラブ飲酒詩選』など、酔っぱらいにまつわる文学は大好物。
しかしこちらは「楽しく飲みましょう!酔いましょう!ぶっ飛びましょう!」という内容ではない。タイトルが綺麗なので、あやうく騙されるところだった。
アル中で入院することになった主人公。
病院という生と死が行き交う閉鎖的な場。個性的な入院患者とのやりとりはコメディタッチで楽しい。一方で、生と死の対比がかなしい。
アルコールが「必要か」「不必要か」という大前提。
バロウズやギンズバーグの名前も挙がる。とくにバロウズは、『裸のランチ』を書いたことさえ覚えていないというエピソードとともに書かれていて胸が高鳴った。
"今日しなくてはいけないことは明日する。今日飲める酒も明日の分の酒も今日のうちに飲んでしまう。それがおれの選択だった。"
なぜお酒を飲むのか、という問いに真摯に向き合った小説。
わたしも飲酒が大好き。酒飲みに響く台詞がたくさん。乾杯。