2024/10/31:日記

Aqu4
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公開:2024/10/31

今日は短い。ブルスカでパーフィットの話が出た。彼の主著を2冊とも翻訳した森村進はその功績だけですでに日本の倫理学に比類なき貢献をしたと言って良いと思う。というか彼がいなければ決して邦訳されることはなかったんじゃないかな。倫理学においてはそういう本は多い。例えば、ヘンリー・シジウィックの"The Methods of Ethics"は、現代倫理学の礎を作った本の一冊であり、パーフィットもカントの『道徳形而上学原論』と並べて賞賛し、おそらく現代で最も有名な倫理学者の一人であろうピーター・シンガーも彼についての解説書を出し、さらには著作権の切れた名作をオンライン上で無料公開するプロジェクトであるProject Gutenbergでも公開されているぐらいには重要な本。なのだが、邦訳はない。本来なら岩波文庫に入っていてもおかしくない。それなのに、邦訳どころか、シジウィックについての簡単に手に入る解説書すら一冊もない。これは倫理学という学問が日本においていかに軽んじられているのかという一例だと思う。道徳や正義、自由や平等、権利や義務といった事柄について、誰も学術上の議論の蓄積を参照することなく場当たり的に話している。

↓リンク、下は先述したProject Gutenbergのやつ。上はClasscal utilitarianism web siteのやつ。”The Methods of Ethics”はベンサムやミルの功利主義を精緻化した古典的功利主義の集大成であり、現代功利主義の祖とも言える。

@aqu4
The emotional frog and its rational tongue