澁澤龍彦『快楽主義の哲学』第5章「快楽主義の巨人たち」を読んだ。オスカー・ワイルドのものとされる以下の言葉が印象的だった。
「ほんとうのことをくり返してしゃべったって、しかたがないではありませんか。だいいち、ちっともおもしろくない。二つの世界があることを知らねばなりませんよ。その一つの世界とは、現実の世界で、これは話さないでも存在している世界、話さないでもわかっている世界です。もう一つの世界は、芸術の世界で、これは話さなければいけない。話さなくては存在しない世界なんだから。」(文春文庫、pp. 173-174)
トラントロアのクッキーが良かった。名前がレトロワ(チョコレートのお店)と紛らわしい。どちらも美味しい。
今日は東京に帰る日。ターミナル駅に入っている百貨店の北海道展でお弁当を買ってから新幹線に乗り込む。座席を倒す時、後ろの人から「もっと倒してください」って言われたんだけど、何。車内では小川洋子『ブラフマンの埋葬』を読んだ。
「彼らが皆いなくなってしまった、という想像は、思いの外僕を悲しくさせなかった。むしろ安らかな気持ちにさせた。家族が一人ずつ旅立ってゆく、残された者は、死者となった者の姿を、写真の中で慈しむ。そこでは死者と生者の区別もない。やがて少しずつ残される者の数が減ってゆき、とうとう最後には誰一人いなくなる。まるでそういう家族など、最初からどこにもいなかったのだというように、あとにはただ無言の写真だけが残される。……その静けさが、僕に安らかさを与えてくれる。」(講談社文庫、pp. 85-86)
小説って面白いけれど、同時にどこか物足りなさをも感じてしまう。これは自分のために書かれた本だ、とまで言えるような、心にぴったりとハマるものには未だ出会えていないような。それで、次に読む話はそういうものかもしれないと期待して、また手を伸ばす。