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白骨の章|2026年2月

aramashi
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公開:2026/3/1

2026年2月6日(金)

灰色の子が脱衣所の珪藻土マットに身体を熱心にこすりつけている。肉球型に廊下が濡れる。

2026年2月7日(土)

不自然な時間に母からの電話。祖父が亡くなったとの報せ。押し入れから喪服を出し、新幹線と宿の予約を取る。

2026年2月8日(日)

隣家の屋根に積もる雪を網戸越しに猫たちに見せる。白色の子の胃の調子は薬を混ぜたちゅーるを与えるうち落ち着いてきたよう。傘を指して小学校へ。票を投じる。

2026年2月9日(月)

白粉を施され目をつぶり眠る様を見ても、この体内の流れは止まっていてもう二度と動き出しはしないのだとはにわかに信じがたく、ばあと子どものような笑みを浮かべて起き上がりそうな気がしてしまう。

祖父の享年は94歳。祖母が亡くなったのも同じ歳だった。妻の遺影がある座敷で珍しく寝た晩、そのまま静かに事切れたと聞けば、手を引かれたとも考えたくなる。

2026年2月10日(火)

推理小説とクロスワードと棺から溢れそうなほどの花々とを添えられた祖父の顔に重ねられていく蓋の影。荼毘に付すためのスイッチは長男が押した。壺に納められたお骨を前に、僧が読み上げる白骨の章を聞く。

2026年2月15日(日)

MとYとYの子と私の4人でランチ。子が握っては落とすスプーンを受け止めては手渡す。触れる指先が湧き水のようにやわらかい。

感情に理解を取り残されて追いつけない。そのような表情でもって困惑するMの話を川辺で聞く。失いたくない存在に出会ったことを、過失でも事故でもなく、祝福と受け止められると。

2026年2月21日(土)

市井の人のことを知るのが好きなんです。歴史に名前を刻まれない一般の人たちが笑ったり怒ったり泣いたり憤ったりしながら日々を送っていて、それは昔も今もあんまり変わらないなとか、その時代に自分が生きていたらどう暮らしたかなとか、考えるのが楽しくて。

階いっぱいを埋め尽くす歴史書の棚を前に彼女は目を輝かせている。展望台から見下ろす東京は沈みゆく夕日に細く照らされて、そこだけ波間のように瞬く。

2026年2月22日(日)

友人がつくるタコスを食べ、古着屋を2軒回る。路面電車が走る住宅街に犬と歩く人が多い。

@aramashi
詩歌としての日記|猫2匹|lit.link/aramashi