
国立西洋美術館で『スウェーデン国立美術館 素描コレクション展』を観る。作品を守るためぐっと明るさが抑えられた館内には、細やかな筆致で描かれた大小のドローイングたちが淡く照らされている。
数日前に東京都美術館で『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』を観た際にも思ったが、経験や知識に裏打ちされた確かな技術によって生み出される絵画は遠く時を隔てた先に目にしてもすっと身に馴染むほど心地よく、研ぎ澄まされた強かさが、積み堅められた柔らかさが、近頃はほしい。
上野東照宮を通り過ぎる間際、鼻先を掠める線香の香りは色づいたようにありありとして、木漏れ日を踏み差す爪先が触れる石段は硬かった。