2024年10月28日(月)
インフルエンザの予防接種を受けるため出社。なるべく電車に乗っている時間を減らしたくて一駅分を歩く。地下に潜り席に座って膝に置いた本の厚みに息を整える。広告の量はメトロならまだマシ。
ずるいと思えるうちはまだ作れる。他人の言葉や作品を見て湧き立つ思いに少しホッとする。
2024年10月29日(火)
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やたらに空腹を覚える日。高下する気圧にのされて我慢する気も薄れた。コーヒーを飲みチョコクッキーをかじる後ろで猫たちが折り重なって寝息を立てている。
月末が近い。今日は17時に上がったってよかった。
2024年10月30日(水)
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Googleが提供するハロウィン仕様のミニゲームのスクショが同居人から送られてきた。主人公である猫の顔が灰色の子に似ているとのこと。たしかに目つきの悪さが近しい。少し遊ぶ。
このままをこのままにしていていいわけがないとの確信が日ごとに強まりようやく立ち上がる。なぜもっと早くできなかったかと問われたところで今は今が最も新しい過去で、最も古い未来で。
理解や反応を求める大声にさらされつづけている。言葉から遠ざかりたい。pinterestをスクロールして名刺や帯の参考を探す。
2024年10月31日(木)
音が反響してうねりを増す。とぐろを巻いて身を締めてくる。流れに任せているなら下手に抗わないほうがいい。足を着けようともがくだけ沈むから。
2024年11月1日(金)
この人は私と向き合いたいのではなく私を前に向かわせたいだけなのだろう。ボタンの掛け違えめいたズレに出くわすたび、濁った空白がぼとりと時を止める。
はたはたと涙を落としながら猫を撫でた。まどろみの最中の彼らは静かに目を細めている。薬を飲み横になり湯船に浸かって同居人と晩酌。ハーゲンダッツを食べて爪にオイルを塗る。
2024年11月2日(土)
朝早くから出かける同居人を見送り二度寝。もそもそと和室に降りる頃には猫たちがトイレやら餌皿やらをしちゃかちゃにしていた。
空気の重さに削がれる気力をコーヒーでだましだましてページをめくる。河野裕子歌集『あなた』をほとんど読み終えた。琴切れるその間際まで詠みつづけた人の歌。
2024年11月3日(日)
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晴れたのはいいが今日とて頭痛。気に入りの服を着ているからまだなんとか。横浜でYと落ち合って昼食。黒酢あんのかかった赤魚をひじきご飯に載せていただく。
一人称の感情に第三者のうなずきが添えられることでようやっと確信が持てる。火箸を握る手に力を込めていいと教えてくれるのは往々にして他者。
せきしろ『そんな言葉があることを忘れていた』を読む。語り過ぎない言葉が今は心地いい。