『ふつうの軽音部』が熱い。
11月3日に第44話「輝く日々を叫ぶ」が更新された。
今回は主人公のはとっちの先輩、たまきさんの過去話だ。たまきさんは髪色が薄くて、かわいくて、まつ毛がバチっとしてて、いかにもヒロイン顔という人だ。後輩はとっちにとってはとっても頼りになる先輩だ。
でも、そんなたまきさんでも、軽音部やバンドの仲間と上手くいかなくてもうダメ…ということがあり、しんどい気持ちになっていく。
夏帆さんはたまきさんにとって大切な友達だったが去ってしまった。
たまきさんを密かに想う喜田さんは、たまきさんとバンドメンバーや友達でいられるように恋愛感情に蓋をして……。
あらすじに絡めながら感想を書こうと思ったけど、難しい!!
でも、本当はそれよりも伝えたいことがある。それは! 『ふつうの軽音部』を読むと、私は自分の高校時代を思い出すということだ。
今回、たまきさんはライブ中のMCで、軽音部って気持ち悪くないですか? と、観客に問いかける。ダサくて痛くて寒い軽音部ともいう。内輪ノリ、青春ごっこ、マウントバトル、人を追い込む人間関係やその噂話……。私はこの漫画を読んでいると、軽音部じゃなかったけど、「ある……、この感覚ある! こういう高校時代を送ってきたわ!」と時々思う。特に、マウントバトルの頻発は見ていると普段、「バトルなんてわからない、バトル漫画だってそんなに好きじゃなかったし……」と思っていた自分が「いや、バトルしてきたわ。高校時代の部活で劣勢だったけど、私バトルはしてきたわ」と思い直す。自分の中にあるバトル魂みたいなものを、劣勢にあったというだけで「なかったこと」として扱い自己イメージをかわいそうな自分にしてしまったことに気づく。
そして今回、先ほど書いたたまきさんへの恋心をあきらめた喜田さんの振る舞いを見て、私は高校時代、正直部活とは関係なかったし、恋愛関係でもなかったけど、一緒に並んで帰った男友達のことも思い出した。
私がその男の子からどう見られていたのとか、漫画の喜田さんの振る舞いが大人だとかそういう話じゃなくて、上手く言えないけど付き合うに至らない男女が一つの目標、グループの中で恋愛ではない関係で笑いながら並んで歩けたあの時代、あれは「青春」だったんだな! と、気づいたことだ。
もしかしたら、喜田さんはバンド活動が終わったらたまきさんに告白するかもわからない。心の内はそうだとしても、私はこの瞬間にふたりが仲の良いメンバー、友人としていることを選び、並んで歩いている姿が、この行いが本当に尊くて、で、それが泣けるんだよなぁ、熱いんだよなぁ! って思った。
そして、たまきさんのMCに戻るが、そのMCを読んで私はボロボロと涙をこぼした。正直、自分の送ってきた高校生活は華やかでもなかったし、今でいう陰キャ女子だったし、華やかな部活仲間とのマウントバトルにはいつも負けていたし、そこから抜け出すこともできなくて、不器用だったあの時代。いつも自分のことをきもくて、ダサくて、痛くて、寒い奴と思っていた時代。でも、もしあの時代のアルバムにタイトルをつけるのならば、今は「青春」と書くだろうなと思った。これは「キラキラ青春物語」にラベルを塗り替えるという行為ではなく、中身そのままできもくて、ダサくて、痛くて、寒いと言われるかもしれないけど、それがそのまままるごと青春だったんだな、という自己理解だ。
正直、高校時代は無念なことが多くてあまり振り返りたい時代ではなかった。他者評価に怯えながらも変えることのできない自分に悶々としていた時代で、見直すことも困難だった。だが、この『ふつうの軽音部』という物語のリアリティは文化系の部活で悶々と過ごしてきた人に優しく寄り添ってくれるなと感じている。まるで、骨折した足に添える木の棒みたいな漫画だ。そして、骨折はいつか治るし、治ったら歩き出せると思わせてくれる。そういう漫画ではないかと、今、私は思っている。