長野市といえば善光寺で、多くの観光客は長野駅から善光寺までの直線を往復する。この距離は健康な大人なら十分に歩ける距離で、道中にいろいろなお店もあったりして、行き帰りするだけでだいぶ観光した気分になれる。
多くの観光客はこの往復で観光を終えると思うのだが、いわゆる門前町の観光地化した通りで、といっても伊勢神宮や出雲大社の門前町よりはかなり落ち着いている気がするけれど、善光寺以外の長野市の市街地な感じを感じられるかと言ったらちょっと違う気がしていた。
今回歩いてみたのは、長野駅から出て、善光寺をやや中心に添えつつ時計回りにぐるっと回るようなコース。
長野駅の善光寺口を出てから、長野市道箱清水石堂線という道を進む。この道も直線的な道で、長野駅付近からはじまって、日本赤十字社長野支部や長野市図書館、信州大学教育学部などを通って長野西高校の前まで通っている。これだけ大きなところに隣接しているので、なにか歴史的な背景がある道な気がしてちょっと気になる。
駅を出てからこの道に入るところは少しわかりにくく、地図で確認していないと道を間違える。自動車は一方通行な細めの道だが、この通りにも個性的なお店が並んでいるのでなかなか楽しい。私は史跡や近代建築や土木遺産などを見るのが好きなので、長野県赤十字歴史資料館の外観を見たり、図書館を見に行ったりしながら進んだ。国道406号とぶつかるところ、ちょうど信大もあるところだが、その交差点の場所に古書店があって寄ってみる。初めて入ったが、本を丁寧にあつかている感じがあって印象が良い。
道の突き当りまで来ると長野西高校があって、坂の上にいい感じにあるのでなかなか格好の良い校舎に見える。このあたりの善光寺より北側の地域が箱清水という地名で、西高と城山公園の間は思いの外フラットな地形になっている。善光寺にはあまり近づかないようにして通り抜けたが、かなり落ち着いている閑静な住宅街となっていた。
途中、小鳥の鳴き声がずいぶんと聞こえてくるところがあって、近くに小とりの宿というところがあったから、そこに小鳥がたくさんいるんだろうと思ったが、どうやら普通の宿のようだ。本当にたくさんの小鳥がいたのかはちょっとわからない。
城山公園は全部通り抜けることにして、動物園のある一番北の方から入った。公園に入るところにある、堀切沢雨水調整ダムという土木施設がなかなか見応えがあったのが印象深い。今回の散歩は事前に下調べをしないで決行したので、思いがけないものに出会ったときのインパクトがいつもより大きかった気がする。
その後は長野地方気象台を眺め、新しくなった長野県立美術館を見て次は中に入ろうと思い、蔵春閣という昔の公会堂を見てなかなか威圧感があるなと感じ、そのまま南へと進んで公園を通り抜けた。公園の終わるところに下に降りる階段を見つけて、こういった小道はなかなかの好みなので降りてみたところ旧北国街道に出た。
ここまで来ればあとは権堂なのだが、あまり大きな道を選ばずに、寄り道をしつつ進む。まずはヤマとカワ珈琲で豆を買う。原産地ごとの豆の他に、シーズンブレンドというのがあって、普通のというか、通年で販売しているブレンドはないみたいだ。季節によってブレンドが変わるというのは少し珍しいように思う。
権堂の商店街まで降りてきて、秋葉神社の勢獅子を眺めて、イトーヨカドーから生まれ変わった綿半に寄る。綿半は長野県内にあるホームセンターとスーパーが合体したような店舗を運営しているイメージだが、ここはかなり小洒落た店舗だ。商店街をちゃんと見ていこうかと思ったけれど、駅前に戻ることにして、相生座の外観だけは眺めてから次に進んだ。
アパホテルのある通りというのがなんだかしっくりする道を駅の方向に進んで、東急百貨店の本館と別館にあるいくつかの店舗によったけれど、これは省いていいと思う。
駅に戻ってきたところまででおおよそ4時間。ぐるっと回るだけで面白いのかと心配していたが、選んだ道が良かったのか、かなり楽しめました。誰かに勧めるときに、善光寺に参拝する以外のおすすめを見つけにくい街ではありますが、観光ではない普通の街として魅力的な面は多くあることを実感しました。