2024年3月31日(ナイフを遡って)

とても暖かい日だった。春が好きだ。春風が好きだ。春服も。桜も。つくしも。新緑も。春眠も。全部好きだ。

今、恥という感情について小説に書いている最中なのだけれど。その間中、頭の中である言葉が繰り返されている。

ぼくが抱いている恥という感情は、それを抱えきれなくなった誰かにそっと植え付けられただけのものに過ぎない。という言葉。かつて優しいひとが、ぼくに言ってくれた。

弱さや苦痛や恥辱のすべては、自己の人間性に問題があるからだ。という認識の元に育ったぼくにとって、その言葉は世界の根幹を揺るがす力を持っていて、今だに頭から離れない。

いつか、これを主題にした小説を書くと思う。というか、はっきりとは意識していなかったにせよ、既に同じ主題で掌編を一本書いていた。

苦しみは、過去から疫病のようにやって来る。ずっとずっと過去から…。

現在を懸命に生き、未来に希望を持とう。というのが、小説を書くことに於けるぼくの態度だけれど、その中でどうしても過去と向き合わなくてはならない。疫病がべったりとこびりついたナイフと。