雨の音がする。一日中、降るそうだ。以下、エチュード。
ーーー
「雨と水たまりならどっちになりたい?」とぼくは言う。
「同じようなものでしょう」と彼女は言う。
「もともとは同じだね」とぼくは言う。
「水紋になりたい。しかも、何処までも何処までも拡がっていきたい」と少し考えてから彼女は言う。
ぼくは水紋になって広がる、雨とみずたまりの交差点に思いを馳せる。足音や呼吸が、何処までも拡がるさざ波の波形になって、ぼくたちから広がっていく。
「笑わないんだね」と彼女は言う。
「笑わないよ。何故」とぼくは言う
「こんなこと言うと、笑われるかと思って」と彼女は言う。
「笑わない」とぼくは言う。