今まで出会ってきたひとたちの多くは、優しく親切だった。もちろん、少しは意地の悪いひとたちもいたけれど、それはそれでかまわない。ぼくには意地の悪いひとたちをコントロールすることはできないし、彼らよりも意地の悪いやつを知っている。
ぼくだ。ぼくがぼくに優しくない。自分を責め、過去を苛み、現状を否認し、未来に怯えたりしている。
世界はもっと美しいはずなのにな。とぼくは思う。そう思う根拠はどこにあるのだろう。やっぱり、今まで出会ってきた多くの優しい人たちの残像のなかにあるような気がする。
殴られたり、優しくされたりで生きてきた…。ぼくも優しくなりたい。ひとを傷つけたくない。生きる恐怖に屈した時、怒りがぼくを支配し、自他を傷つけようとするだろう。願わくば、生きる喜びを信じたいし、感じたい。
世界はもっと美しいはずだ。いつでも、その思いがあった。どんな孤独な時でも、泥水な時でも、血みどろの時でも。それはいつもぼくのそばにあった。
誰かが「生きなさい」と言った。