2024年4月14日(春よ。島崎智子さん)

 春が来たので島崎智子さんの「春よ」が頭の中でリフレインしている。歌詞の冒頭を以下に。

あなたの思うような女にはなれません。わたしのために人生を、棒に振って台無しにしてくださいな。幾度愛されても愛し方がわかりません。わたしのために人生を、棒に振って台無しにして欲しいのです

 歌詞だけ読むと、おどろおどろしいまでの不穏が読める。だが、これが歌になると不思議と希望が湧いてくるのだから魔法だ。邪悪な魔法じゃない。傷や痛みやエゴから、彼女は希望の魔法を唱える。

 島崎さんの歌は<孤独>の意味を一瞬で変えてしまう。と誰かが言っていた。本当にその通りだと思う。

 本来、相容れないはずの対立した概念を、島崎さんの音楽は同時に存在させてしまう。愛と憎しみ。汚さと美しさ。エゴと思いやり。力強いピアノと歌声は広く、その広さと深さで対立ごと包含することによって、相反しあうどちらも捨象していない。これは音楽による生々しいアウフヘーベン(止揚)なのだ。人生に心を開き、それを受け入れることによって、矛盾が矛盾でなくなるという、生きるという戦いの美しい有様を聴くことができる。

 最近詩集が出版された模様です。買いましょう。