祖母の余命を知らされた時、私は悩んでいた。その頃に同人イベントがあったからだ。妹家族と一緒にディズニーに行く計画もしていた。面会に行けないので容体もわからない。印刷物自体は自宅に搬送すれば遠征直前に何かがあっても動きやすいだろう。問題は旅行中に何かがあった場合だった。
母達は「私たちの事だから行ってきていいよ。見舞い行けないし」とは言ってはいるが不安は拭えない。幸い、予約していた飛行機は便の変更が可能な事もあったので、とりあえず何があってもいいようにイベント突然不参加になるかもしれないアナウンスだけはしておいた。
幸い、祖母は容体が落ち着き、奇跡的に元気になった……のもあったのだが、入院先の病院と相性が合わずに退院する事になった。祖母の事は大好きなのだが、祖母の性格は正直難しい。
イベントにも無事参加する事が出来て、スペースが隣だったあげはさんに「実は祖母が~」と、事情を笑いながら説明していた。
ディズニーのお土産で祖母には大好きな雷おこし、伯母にダッフィーのTシャツを買ったのだが、祖母が可愛いと気に入り、祖母はそのシャツをちょいちょい着てはデイサービスに通っていたらしい。スタッフさんにダッフィー好きな方がいたらしく、言われてうれしそうにしていたとか。
7月末、妹家族がやってきた。祖母が生きてる間に会うのが難しいと思っていたのでこれは私はとても嬉しかった。その週の土日、姪と一緒に祖母の家に泊まる事にした。姪にとって初めての母親がいないお泊り。最初は不安そうにしていたが、すぐに慣れて寝る前には私がコスプレしていた時のウイッグ(伯母ががんの治療で髪の毛が無くなった時期があったのであげた)をつけて遊んでいた。
姪が宿題をやっているのを見守りながら、祖母と色々話す。最初に入院していた病院がどれだけいやだったかを語られ、入院計画書を見せてくれた。看取り前提の事が記載されていた。祖母は「私120まで生きる予定だから困るわ!」と言っていたので姪と一緒に笑ってしまった。
その後、思い出したかのように「あるちゃん、買ってほしいものがあるの」と、言われて何が欲しいのか尋ねると本が欲しいとのこと。
「どうせ死ぬんだから」
すごいタイトルである。祖母が自分の死に向かって覚悟を決めているようにも思った。楽天で注文して祖母の家に届くように手配をする。
祖母は私が祖母にプレゼントしたものを覚えていた。靴を買ってプレゼントしたのは覚えていたが、爪やすりをプレゼントした事を祖母から聞くまですっかり忘れていた。覚えていてくれたことがとても嬉しかった。
そしてふと、前の年に私が祖母の家で倒れて救急搬送された時の事を思い出した。救急車が到着するまで、祖母は私の手を力強く握ってくれていた。
祖母の手を握る。弱弱しい手になっていた。