僕はお昼ご飯を職場の近くの適当なお店で食べている。何軒か目星をつけて置いて、その中からその日の気分とか、腹の空き具合とか、天気とか、日替わりの内容とかで選ぶ感じだ。
労働者の昼休みはごく限られた時間なので、どうしてもオペレーションや回転率が洗練された大手チェーンの店に行きがちなのだが、最近一軒お気に入りの、というかお気に入りポイントが上がった非大手チェーンのお店がある。
その店は夜営業は居酒屋で昼営業にランチメニューを出しているタイプの、神保町ではよくある形態のお店だ。そこの週替わりランチ(焼き鳥がウリの店なのに、何故か豚肉を使った料理ばかり週替わりしている。卸にバーターで買わされているのか?)が美味しく、昨年の秋くらいからよく行っている。
年明けの営業初日にノコノコお昼しに行った時のことだ。普段、ランチのメニューには小鉢でひじき煮がつくのだが、その日の小鉢は紅白なますが出てきた。「正月の余りもんか?」と反射で考えたが、どういうスタッフがどういう生活の中でお店を営んでいるかなんて分からんので、真偽は不明だ。
酢がきき過ぎていてあんまり好みではない紅白をなますを摘みながら、「でも、あまりモンだったらなんか嬉しいなー」と思っていた。何でだろうね。人間が好きだからかも。無機質の中でも確かに誰かが生きている、みたいな。
いつも座席の案内と勘定をしてくれるオバチャンと「今年もよろしくねぇ」「あ、うん。よろしく、ありがとう」とマヌケな受け答えをして、休み明けで人も疎な混凝土の町に出ていった。