Twitterを眺めていると無意識に短時間のDoomスクロールに陥ることがある。しかし思考が停止することはなく、統制を失った連想が己の認知領域いっぱいに飛び回り始める。まさに起きたまま夢を見る状態になる。
私は「おすすめ」のタイムラインを好んで見ているが、時間軸の整合性を失った情報群は、時に意味不明な文脈を作り出すことがある。それを額面通りに受け取った脳は荒唐無稽な想像を生み出す。だが、これは事物の物語性を認識できる時点でまだ思考に整合性が残っており、『インセプション』的に言えば浅い階層の夢にすぎない。
さらに深い段階では、寸断された文章のパッチワークが始まる。思えばダジャレなどはこういう状態で生まれるものかもしれない。今日、タイムラインで「ギャル」の文字列を見た時、瞬時に「ギャルのボルヘス、ギャルヘス」などというわけのわからないジョークが想起された。ボルヘスとは誰かとGoogleに問いただしたところ、秘密結社の本拠地のような場所で、秘密結社の統領らしい格好をした老紳士の画像が返された。聞いたこともない作家だったが、秘密結社然とした写真が大変よかったので今度読もうと思う。
話を戻すと、このジョークは既に三件ほどツイートされていた。Twitterに酷く依存している人間はこの手のジョークをよく好む。各々が各々のタイムラインという文脈を持って発言し、全体が常に不可知な空間では、全く似通っていない短文と語彙の集合にシュールな面白さを見出しやすいのかもしれない。あるいは、ギャルの存在があまりに大きかっただけかもしれない。
こうした連想は本稿のように書き起こしでもしない限り忘れ去られる。この状態から脱するパターンは主に二つ。一つは、外界からの刺激を受けること。大体気になるトピックが流れてくると中断される。つまり、Doomスクロールではなくなった時。
二つ目は、寝落ちだ。連想はどんどん統制のとれないカオスなものに変化していき、最終的に思考は霧散し最低限の意味さえ失う。まるで宇宙が熱的死を迎えるようにして、限界まで乱雑になった思考は意識を完全に失わせる。これが、眠気ゆえの連想の無秩序化なのか、連想の無秩序化ゆえの眠気なのか私には分からない。
問題は、私の寝落ちの半分がこの連想の無秩序化を原因としていることだ。だから、おかしなジョークが飛び出したときはTwitterかKeepメモに書き出して意識下で消化するようにしている。それでもやはり防ぐのは難しくて、稀にアイディアが降ってくるようなこともあるが、大抵は生産性に酷く悪影響を与えてしまう。今のところ対象療法は刑務官を私の後ろに立たせるくらいしか思いついていない。