輝きをよけて流るる紅葉かな

asazutaiga
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コーヒーを飲んでから、あまりにも暇なので両国橋でだらだらと隅田川の川面を眺めていた。

流体のテクスチャーは、最近になってやっと人類が二次元のグラフィックに落とし込めたものの一つだ。ミクロで見たときには、さざ波のひとつが解けては立って、連続的に変化している。しかし、少しだけ引きで見ることを意識すると、緑とも青ともつかない地のうえに、白いすじが幾重にも折り重なったフレームが、ぱたぱたと写し変えられていくようにも認識できる。前者すなわち物理の面から再現の攻略を試みたのが最近のグラフィックであり、後者すなわち俯瞰的な認知の面で再現をしたのが、北斎を代表とする、波を捉えた画家たちだったのだろう。

多くの通行人は川の綺麗さなどに一瞥もくれない。通りかかった親子連れの、子どもの方だけが、素朴にその美しさを認めて「きれいだねえ」と言った。