ロイドさんついて 1

芦花
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公開:2024/4/27

SPY×FAMILYって、登場人物のルサンチマンにスポットライトあてたストーリーが多いんだけど、ロイドさんはそういった描写が一切ないな。

かといって強者側ってわけではないし、弱者でもない。狂言回しってわけでもない。

うーん、なんだろう。

なんども書いているんだけど、「こども(おれ)が泣かない世界」って書いておいて、その世界に「自分」が入ってないというか。

圧倒的に当事者感がないんだよね。「我欲」がないというか。

珍しいタイプの主人公だと思う。

そこをこじ開けるのが、アーニャだったりヨルさんだったりするんだろうなぁ。

 

ロイドさん…というか、ロイドさんやハンドラーってルサンチマンのその先へいったひとかなーって思うけど、だとしたら①~③のどれだろう↓

①「思考を閉じた人」

②「飲み込んだ人」

③「飲み込んだうえで、無意識に思考を閉じた人」

①②③で展開全然かわるよね。はんどらさんは②かな。

ロイドさんは③かなー。

ちなみにウィラさんとか、あとユーリが捕まえた元新聞記者とかキースはこのスタートにも立ってないかと思いますです。彼らは「ルサンチマンに飲み込まれたひと」かなと思う。

 

 

くるっぷにあげた考察をこちらでも再録しておきます。

M86が雑誌で出た当初のものなので、今はちょっと違うかもしれないですが、おおむね私の中のロイドさんとして。


M86話考察 2023-08-08 00:09:14

 いや、びっくりした。 思ったよりも「そう」だったことにもびっくりしたんですが、原作できっちり表現されたことにもびっくりした。

 私そもそもロイドさんて「自殺願望の無い希死念慮保持者」だと思ってたんですよ。なんというか「死にたいわけじゃないけど、消えたい人」というか。

 もっというと、自殺という欲すら無くした人かなと。ある意味、死を選ぶこと自体が能動的なわけですよ。自分という存在を思い通りにする欲求なわけですから。

 でもロイドさんはそんな欲すらも喪失してしまった人なのかなと思ってました。

 蛇足ですが、自殺願望と希死念慮って似て非なる言葉で、自殺願望は自己の生命活動を積極的に止めたい願望、希死念慮はもっと大枠で社会的排除を消極的に求める思考かな。多分ですが。

 人間て、自分のキャパシティ以上の物を浴びたり経験したりすると感情が抜け落ちると思っていて、それは生命を維持するために余計なものをシャットダウンする本能のようなものだと思うのですが、彼はあの経験からずっとそのままの状態でここまできてしまったのかなと推測してました。 ロイドさんて、人が当たり前に持つ「あれがしたい」「これがしたい」「ああして欲しい」「こうして欲しい」という欲求が一切無いじゃないですか。そういう描写がない。 自分に対しても無いし、他者に対しても無い。

 アーニャちゃんには「もっと勉強」と言ってはいますが、それも「任務」という理由があって必要なだけであって、別に彼の本心でも望みなわけでも無い。 彼の唯一の願望である「子どもが泣かない世界」にしたって、その世界に「自分」が入っていないんですよ。

 とても入っているとは思えない。

 ということは、その願望すらも、生きていくための「指針」なだけであって「理由」ではない。

 そもそも10巻でスカウトしに来た軍の人に「どうでもいい」「理由なんてない」と言ってますし、あれはあれで本心だと思いました。 彼にとっては、故郷の人たちがいなくなった時点で、彼の世界は完全に壊れてしまっていて、心はどこにも行けないんじゃないかなぁと。

 世界すらどうでもいいと思っていたのでは?と。

 ただ、そういう抜け落ちた感情の中であっても、身体が健康体であるうちは「生命維持」という司令が勝手に出てしまう。そんな時に手近に武器があればそりゃ取ると思うし、在りし日の故郷に繋がる記憶と伝手が「平和な世界」の中にしかないのであれば、それに縋るのは自然かなぁと。

 彼があれだけWISEの中で尊敬されたり、とばちゃんが心酔するのもわかる気がします。

 任務や、自分を取り巻く環境に対して我欲が無いんですよね。

 それは、自分の欲がある普通の人にはさぞ高尚に映るだろうなあ。一種の殉教者に向ける信仰のようになるだろうなとは思います。

 とばちゃんのあの感情は、信仰に通じるものがあるなと勝手に解釈してます。

 でね、ここからが本題(長いよ) その彼が、「敵だらけの」「任務中に」あって、初めて湧き上がった感情が「嫉妬」ですよ。(読者に初めて晒した感情ってことです) ヨルさんに対して。

 ヨルさんとユーリの関係を見て、「羨んだ」ってはっきりと自覚してました。 淡々と流してますが、自覚するほどの感情が自然と出たんだ!と、10巻を読んだあとに読み返してちょっと感動すら覚えちゃった。

 【羨む】 1 他の人が恵まれていたり、自分よりもすぐれていたりするのを見て、「自分もそうありたいと思う」

(太文字!)  動いたー!! 感情が、感情が動きましたわよー!! クララが!クララが立ったー!!!

 というくらい大興奮でした笑 だって任務と一切関係無いとこでこの感情が出てきたんでしょ!? その最初のきっかけがヨルさんなんでしょ!!

 で、その上でユーリにトドメをさせなかった理由が「彼女が悲しむから(意訳)」で、帰ってきて顔見た途端に「力が抜ける」描写ですよ。

 タイッツーと重複しますが、「顔見た途端に力が抜ける(緊張が解ける)」って、彼の今までの生き様からしたらあり得ないことですし、本能によって「生きさせられてる」と考えれば、その本能がリラックスしちゃってるわけなので、全く自覚してないけれどこれは相当惚れてるんだなと。

 で、「そこ書くんだ!?」と思ったわけです。

 やっと冒頭に繋がった笑 いや、正直もうちょいぼかすか濁すかと思ってました。なんとなく。

 コメディと銘打ってあるので、そこはごにょごにょ濁してなんだかんだでいつの間にか本物夫婦でした~ってのもありっちゃありだと思っていたので。 でもこの作者さん、余計な説明とかはしないですが、個の人間の清濁をきっちり描く方なんですね。取り繕ったり、神格化はさせないので、これは違った方面からも楽しめるなあとさらに嬉しくなっちゃいました。

  ロイドさんがヨルさんに向ける感情って、偽悪的というか、悪い方に悪い方に無理に持っていっている気がしてて、それはもう本音では芯から信じちゃってるってことですよねえ。

 彼の職業からしたら受け入れられないと思いますが、人を信じるのに証拠はいらないんですよね〜。 語弊があるかもしれないですが、「欲」とか「願望」って、奇麗な感情(奉仕的な思考とも言えるかな)の中では生まれないと思っているのですが、ヨルさんに向ける感情ってまさに奇麗なだけじゃない感情も入っているなあと。そんなことも見事に表現されてるなと。今はまだ任務に付随する感情のほうが大きいですが、今後彼女に対しては色々綺麗なだけでない感情を出していって欲しいし、そんな中で自分の「生きていく理由」を手にして欲しいなあと。もちろん、F家の中でですが。

 そんなことを思ったりしましたわ。

 ところで、完全に冗長ですが、そんな芯から信じちゃってる相手が殺し屋っていうね。

 これ以上は、テーマ関係ないから止めておきますが。でも本当によく出来たお話ですよ。

 はー、楽しい。

@ashika
二次創作をしています。 [個人サイト]clayincl.fun