ちょっと前にメディアに取り上げられていた某ドラマの民放局及び出版社の報告書について、人目につきづらいところに所感を書き残しておこうかと思いこちらにアカウントを作ったのだが、一発目の記事としてどうなんだ…と迷っているうちに時機を逸し、かといって一発目にふさわしいネタがある訳でもなく、グズグズしているうちにあっという間に2週間以上が経過してしまった。
いつものことだ。
割と軽率にアイディアが思い浮かぶたちなのだが、いざ実行の段になってあれこれとシミュレーションをし始め、結果として「…やらんでいいか」となることがほとんどだ。石橋を叩き壊して渡れなくなる、あるいは妄想が過ぎて自縄自縛に陥るというか。明け透けに言ってしまえば、失敗を恐れるあまり勝負に出られない人間なのである。にもかかわらず、己の名前でもって責任を負い、時にシビアな決断をしなければならない自営業者をやっているというのはなんとも不思議な話だ。まぁシビアな決断、とはかなり大袈裟な物言いだが。
一方で、貧乏性を患ってもいるので厄介だ。「…やらんでいいか」と墓場に埋めたことを、自分の中でほとぼりが冷めた頃にどうにかならないかと掘り返してきてしまうのである。
——ということで、例の報告書の件について少しだけ所感を述べる。
仕事をご一緒したことがない方の仕事ぶりを好き勝手に論評するのはどうかと思うので、その点については差し控える(思うところは大いにある、とだけ言っておく)
特に出版社側の報告書を読んだ後に「あぁ…」と碇ゲンドウのポーズになってしまったのだが、原作者が負っておられたであろう心労は言わずもがな、担当編集氏の過重労働と心労を思いやると胃のあたりが痛む。せめてもの救いが、考察のセクションにおいて担当編集の業務と責任範囲に対し調査委員会が懸念を示し、さらりとではあるが提言の中でも触れていたことだ。委員会の構成員が取締役及び顧問弁護士事務所であることを鑑みると、現場に対して結構な怒られが発生し、編集部の業務の在り方について出版社内で具体的な改善策の検討が進められていると思いたい。報告書での踏み込み方を勘案すると、出版社側の顧問弁護士は極めて真っ当な仕事をされていると感じているので期待しても良いだろう。いや期待させてくれ。
そう感じた理由は、契約周りの問題点について、現実的かつ地に足のついた提言があったからだ。残念ながら民放側の報告書では契約について問題はあるとしながらも何ら具体的な提言がなく、組織に属していた時代に法務と営業の双方を経験した人間として、民放局側の報告書を読みながら「契約周りについては実務的にこういう改善策は取れまいか」と一人壁打ちをしていたので、「あのさぁ…(弁護士の存在意義よ)」という感想を抱いていたので尚更だ。
なにはともあれ、今回の調査結果が公表されたことで、彼の業界の悪しき(と外部の人間としては感じる)商習慣が幾ばくかでも改まり、なによりも原作に対して最大限の敬意を払ってアニメ化、実写化が行われるようになることを願う。これは、翻訳を生業にしようとしている自分自身に対する戒めでもある。
…結局のところ「少しだけの所感」では済まなかった訳なのだが、これも私という人間なのである、と言い添えて一発目の記事及び自己紹介としたい。