半年ぶりの帰省を終え、新幹線の臭いで滲み出てきた頭痛と吐き気を抱えながら、東京駅の親子丼屋で旅の疲れを癒した。
帰りの中央線は中途半端な時間でガラガラ。股の間にキャリーバックを挟み、入り口すぐの座席に沈み込んだ。
帰ったら友人と飲みに行こうと思っていたけど、頭痛と吐き気が治まらないから家に着いたら少し寝るか...そんな事を考えている間に神田を過ぎ、乗り換え駅のお茶の水に着いた。
キャリーバッグの取っ手を右手で掴み、背負っている、命より大切なMacbook Proの入ったリュックのショルダーストラップに左手の親指を掛け...??
スッと血の気が引いた。
肩にあるはずのショルダーストラップが無い。背中に手を伸ばすとそもそもリュックが無い。
MacBook Proとの思い出が走馬灯のように駆け巡る。ぐるぐるぐるぐる回る地獄の木馬にiPad Proも乗っている。よく見るとAnkerの高級アダプタが奥にいる。その隣にいるのは6万円のKindle scribeかな?なるほど、これが死というやつか。
急いで中央線を降りると向かいのホームへ走り、東京駅に戻る電車を待った。
親子丼屋だ。親子丼屋のテーブル下にあるフックにリュックを掛けた。間違いない。生存率は高そうだけど、万が一を考えてさらに生存率を上げておこう。
救助の列車を待つ間、急いで親子丼屋に電話を掛ける。
「先ほど1人で食事をした者ですが、リュックを入り口すぐのテーブルフックに掛けたまま忘れまして。」
「承知いたしました。ただいま確認しますのでしばらくお待ちください。」
よし。まだお店を出て10分ほどだ。これで生存確定。ゆっくり救出に向かおう。
「見つかりませんでした。」
よし、OK。では今から受け取りに向かいま、マ?
【 つづく... 】