2024/06/05

atoraku
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公開:2024/6/6

「美しい仕事」だったか、それとも「美しき仕事」か。上映が予告されていた数ヶ月前から話題にのぼるたびに「どっちだったっけ」と覚えられずにいたわたしだったけれど、bunkamuraで上演している他の映画に附いていた予告編で、身体の肌色と顔に落ちた影が織りなす強烈なコントラストのなかに佇んだサンタン同様に左端の切れたフォントを観て以来、間違えることはなくなった。「美しき仕事」。そのスタイリッシュなタイトルが挿入されると同時に流れだす「The Rhythm of the Night」が、『悪は存在しない』を観た一昨日の予告編から離れなくて、これは行かねば!!!!という気持ちで翌日のチケットを取った。案の定、あの曲が無人のディスコに響き渡るラストシーンでわたしの心臓はドドドドと高鳴って、無我夢中で踊り狂うガルーといっしょにいまにも踊りだしたい気持ちだった。機を逃さなくて良かった、最高のタイミングで行けて良かった。興奮しすぎて渋谷駅で山手線の反対方向行きに乗ってしまい、そのまま運転を見合わせたか遅延のためかアナウンスが流れているのを新宿駅で聞いて、慣れない地下鉄乗りかえのために歩き(同じ駅とは思えないほど遠い)、大幅に迂回して帰ったのだけど熱を冷ますにはよかったかもしれない。

肝心の映画の内容だが、あんまり覚えていないというのが正直なところなのだけど、しかし大地と海と訓練された部隊の運動に身を委ね、欲望とまなざしのリズムに心を揺らしてさえいれば、「長いな」と思う瞬間はひとときもなく、最後まで行ける。演出とは「俳優とカメラとの距離を測ること」だとクレール・ドゥニは語っているが、まさにその適切さを感じた。どの人物もとてもいい顔だった。

雑な感想だけれど。昨日、ゼミの方々に『悪は存在しない』観てきたんですよとプログラムも見せつつ伝えたら、めっちゃ行ってるじゃん、bunkamuraの広報のひとみたいと言われた。たしかにそれくらいbunkamuraにお世話になっている。