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ブローガスト14日目(2026/8/23)

八月の光
·
公開:2026/8/23

*自分の家の本棚をゆるく紹介する企画です。

40冊目「ノスタルギガンテス」寮美千子、パロル舎

 「ノスタルギガンテス」という言葉は著者による造語ではあるが、これだけで何か惹きつけるものがある。語り手は小学生の男の子カイ。彼が公園にある古い木の頂上に「メカザウルス」を括り付けてから、その木には「キップル」が集まりはじめ、周囲の大人を巻き込んだ奇妙な現象に発展していく、という物語。全ての現象の中心に「木」があり、その「木」をノスタルギガンテスたらしめたカイも、名づけの親である「神」として周囲から決して自由ではいられなくなる。 「名前をつける」という行為が大きな軸になっており、あくまで視点が小学生であるというだけで、神話的で幻想的な物語となっている。ちなみに、「キップル」はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に出てくる、「がらくた」「役に立たないもの」という意味の造語からきているそうだ。この紹介を書くにあたって久しぶりに読んだけれど、改めて上質な幻想文学だと思った。

41冊目「ノルゲ」佐伯一麦、講談社文芸文庫

 佐伯一麦はいわゆる「私小説」というジャンルで発表を続けている。小説を書く傍ら電気工事の仕事で生計を立てていた過去があるが、その際にアスベストの被害に遭い、長く身体を患っていることは小説にも書かれてある。また、不倫とその結果としての離婚、再婚、鬱病の罹患と闘病の記録など、一貫して自分自身の人生を投影したような小説を書き続けている。この「ノルゲ」は染物作家である妻がノルウェーの芸術家にほれ込み、ノルウェーへ留学するのに帯同し、ノルウェーで暮らした間の出来事を綴った小説。豊かな四季、オスロの暮らし、そこに暮らす人々、日本語学校における並々ならぬ体験など、紀行文のような趣がある。一方、同時に異国における鬱の闘病記でもあり、その心の回復に伴走しているような気持ちにもなれる。「マイシーズンズ」(講談社文芸文庫)も同じくノルウェーを舞台としており、こちらも非常によい。

42冊目「教育」遠野遥、河出文庫

 最近の若い作家はあまり熱心に読まないのだが、遠野遥はチェックしている。1990年代生まれの日本の作家で読む価値のある小説を書くのは、今のところこの人と宇佐見りんくらいではないかと思っているほどである。これはやや暴論だろうか。芥川賞をとった「改良」もよかった。その数年後に発表した「教育」は、異様な行為とその構造が「教育」の名の下で正しいものとして受け入れられ、規範化されている世界を描く。別にSFというわけではなく、「教育を受ける権利」と「教育を受けさせる義務」のタッグのもとで公的教育を受け、標準化された製品としてベルトコンベア式に社会へ出荷された自分自身のことを振り返ってみれば、あまりのグロテスクさである。

@augsutus
主に日記を書いています。