東北の朝、寒い。布団から這い出て台所へ立つ。Sの家の冷蔵庫の中が寂しい。冷凍庫に眠っていたカット野菜で味噌汁を作り、オムレツを作った。古代米入りのご飯がモチモチとして美味しい。納豆とともに食べる。久しぶりにまともに朝食を料理したように感じる。寝坊のSにメッセージ。いつも遅くまで仕事をしておつかれさま。

今日は買い物をした日。東京の家から服を持ってき忘れて、昨晩はSの服を借りて当座しのぎをする。それで、ファッションセンターしまむらで服を買った。それから、男のブティックことワークマンプラスで、登山用のフリースを買った。
道の駅への道すがらに土地に所縁のある文筆家の文学記念館があるはずなのだった。寄ってみようかと話していたが、いつの間にか標識を見失ったので、諦めて次の目的地へと車を向かわせる。しばらく行くと、急に赤い看板が現れる。それが記念館への道標だった。映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の一日中歩き回っても同じところに戻ってしまう魔女の森のような唐突さだった。これを見ずには今日は家には帰らせてもらえないのではないかと不気味になり、見ていくことにした。周辺には牛が放牧されており、草を食んでいる。

森に囲まれた小さな記念館だが、見応えがあった。展示の世界観の強さに、この辺りの自然環境はなんらかの影響を受けてはいないかなどと気がかりになってしまった。存在することで変異の中心となる存在。Sは本を読まない人だが「現代アートの美術館に来たみたい」という感想を漏らす。Sなりに楽しんでいるように見えた。ザ・フォーク・クルセダーズの「戦争は知らない」という曲が流れており、歌詞がよく気に入る。「田園に死す」と「あゝ荒野」が気になって、読んでみたくなる。



記念館の裏に、同級生らが建てたという文学碑があった。そこから湖を望む。


夜は火鍋を作り、道の駅で買った菊の花をお浸しにした。花弁を食べるなんて、少し背徳的で少し聖的。
