日記(2026/4/15-4/20)

八月の光
·
公開:2026/4/20

2026/4/15 業務調整の電話をかけたところ、「私が誰だかわかる?」と言われて戸惑っていると、一昨年に行った管理職研修の指導役の方だった。4月にこちらに異動されてきたそうだ。声だけでわからず、不覚だ。働いて10年経って、人間関係が広がったように思うけれど、その実周囲から堀を埋められているような気分にもなる。悪いことはできないものだ、という気持ち。残業をして職場を出たら、大雨だった。傘を持っておらず、濡れながら帰る。

 村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」第2巻「予言する鳥編」を読み終えた。村上春樹小説の共通のテーマとして、何かの「欠落」あるいは「喪失」というものがあって、その身体のうちに空洞を抱えた人間が登場する。その穴を通過する風の音をいかに美しく奏でられるか(まるでリコーダーのように)、掠れた隙間風の音しか鳴らせないのか(あるいは朽ちかけた枯れ木のように)、欠落あるいは喪失を埋めた時、果たしてハッピーエンドと言えるのかどうか。上の文章は村上春樹の文章を少し意識してみたけれど、「春樹っぽさ」の表現はなかなかうまくいかない。

2026/4/16 仕事。疲れがある割に何も前進していないように感じられる、という事務あるあるの状況に陥る。日常の業務の成果が見えにくいので達成感を覚えにくく、よって「忙しい」という主観に対して客観的な出来高はあまりない。こんなことで給料をもらっていていいのだろうか、という思いが募る。典型的なブルシットジョブだという自覚はあって、自分という存在が社会に全く寄与していないのではないか、という思いに捕らわれる。自分自身が透明になったように感じる。

 世間も暗いニュースばかりで、厭世の念が強まる。無責任な罵詈雑言、意見ではないただの悪口、間違った正義感、不安や怒りなどが渦巻いていて、目を閉じて耳を塞ぎたくなってしまう。心穏やかに暮らすということが、いかに贅沢なことか。徹頭徹尾いっそ自分勝手になれば、生きやすさもあるのだろうか。魂が体の中に閉じ込められていることを恨みに思う気持ちがある。

2026/4/17 職場のパソコンが換装で総とっかえになり、少し落ち着いてきたが、落ち着くとおさまりの悪いコード類がとても気に障るようになった。太いコード、細いコード、うねりのあるコード、それぞれが複雑に絡み合って知恵の輪のようになっており生き物のように見える。30分程かけてほどき、養生テープなどで固定をして整理した。

 夜、自分が幹事の歓迎会。家の近くまで帰って、飲み足りなくて入ったお店で悪酔いをした。周囲の人に迷惑をかけてしまったようで、ひどく後悔する。お酒の失敗はこれまで大小色々やってきたけれど、この数年来で最も大きな失敗だ。ストレスを感じている時に酒を飲んではいけないとわかっているのに。

2026/4/18ー4/19 朝起きた瞬間からひどい酒鬱である。気分の落ち込みがひどい。金曜日の酒の失敗が頭の中を何度も巡り、酷い自己嫌悪に陥る。何も食べず、ほとんど一日横になっていた。ときどき永田カビの漫画を電子で買って読む。土曜も日曜も良い天気だったが、眩しさが疎ましくさえ思うほどだ(吸血鬼だろうか)。日曜日の夕方になってようやく起きだして(明日また仕事だから準備せねばらないという思いから)、スーパーに買い物に行き、少しジムで運動をする。

 夜、SとLINEで不安を感じやすい性格について話す。初めて「ぼうっとすることができない」という感覚を彼の納得がいく形で説明ができたように思う。「頭の中で常に自分が話しかけてくる(あるいは自分と話し続けている)から、だから不安になりやすいし、落ち込みやすい」のだということを、ようやく彼の腑に落ちる形で説明ができたようだ。そして、これは物心ついたころからずっとそうなのだということ、いい大人になるまで皆同じように頭の中で喋っていると思っていたこと、なども話す。こういう頭の中の声を「chatter」と呼ぶということも知る。このchatterが黙ることは一生ないのだろうから、良いことを話してもらうしかないのだろうが、それが出来れば苦労はしないのだが。

2026/4/20 気持ちの落ち込みをやや引きずりながら仕事へ行く。職場内に原っぱがあることを初めて知った。少し歩くと奥に石碑があり、その周囲に春の花が咲いていて、少し気持ちが晴れる。桜は散ってしまったが、ツツジやサツキの季節。

 村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」第3巻「鳥刺し男編」を少しずつ読む。少しずつ本を読む気力も戻ってくる。薄暗い展開が続く。日常のすぐそばにすっと開いている暗い闇を思う。少し足を踏み外しただけで、這い上がることのできない闇。惹かれる心はあるが、そういうものに近づかない人生でありたい。そういったものを寄せ付けぬ精神力と体力がほしい。夜、ジムに寄って少しだけ運動をし、花びら茸とトマトのかきたまスープを作り、食パンを焼いて蜂蜜を垂らして食べる。

@augsutus
主に日記を書いています。