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ブローガスト7日目(2026/8/11)

八月の光
·
公開:2026/8/11

*自分の家の本棚をゆるく紹介する企画です。

19冊目「あなたの人生の物語」テッド・チャン、朝倉久志訳、ハヤカワ文庫

 寡作だが傑作ばかりを世に送り出すアメリカのSF作家、テッド・チャンの作品集。ボルヘスの円環的構造世界を彷彿とさせる「バビロンの塔」やルッキズムをテーマにした「顔の美醜について」もよいのだが、私がこの作品集の中で一番気に入っているのは、「地獄とは神の不在なり」である。天国と地獄、救済と地獄行きが実在し、目に見える形で存在する世界を描く。ヨブ記を念頭に書かれたものらしい。作中多くの人が救われ、あるいは地獄に堕ちるが、その理由は理解不能で不条理である。説明がなされることはない。納得などは望むべくもない。神の存在が証明されている世界での次の問いは、「神を信じるか」ではなく、「神がどんな存在であっても愛することができるか」である。一神教の信仰者でなければ、この問いの本当のところは理解できないかもしれない。

20冊目「ストーカー」ストルガツキー兄弟、深見弾訳、ハヤカワ文庫

 ソ連SFは、アメリカのSFとは異なった趣きがあって面白いものが多い。これはソ連版の「未知との遭遇」というところか。「未知との遭遇」では宇宙人らはその姿を大胆に表すが、こちらは人知れず地球を訪れ、そしてそっと去っていったらしい。しかし、彼らが去った後には、人間の科学力では理解できない異物が残され、そこは「ゾーン」と呼ばれている。タイトルの「ストーカー」は、英語のstalkerではなく、作中に登場する職業のことを差している。決して夜道をつけ狙う人ではない。ストーカーらは命を懸けて不法侵入を繰り返し、「ゾーン」から異物を持ち出しては売りさばくのだった。主人公はそうしたストーカーの一人だ。なお、原題は「路傍のピクニック」。読み進めていると、この原題が表す意味がよくわかる。コミック「メイドインアビス」が好きな方は、きっと気に入るのではないだろうか。

21冊目「治療塔」大江健三郎、講談社文庫

 私が初めて読んだ大江健三郎の小説。中学2年生の時、近所の書店で偶然に手に取ったのが始まりだった。大江作品としては珍しいSF。肉体的にも知性的にも選抜された「選ばれた人々」が、環境破壊と核汚染の進んだ地球を捨て、新天地を求めて「新しい地球」へと旅立ってのち10年。汚染された地球に残された「落ちこぼれ」たちは彼らなりの方法で社会の再建を進めてきたが、そこへ「選ばれた人々」が大挙して帰還してくる。SFといいつつ大江お馴染みの要素満載。なお、続編に「治療塔惑星」があり、実際には描かれなかった完結編の構想が長編「燃えあがる緑の木」で語られる。 

@augsutus
主に日記を書いています。