没世界観 3

autochusu
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頭に思い浮かんではいるが力不足ゆえに作品には出来ない…

そんな世界観を供養しようのコーナー。

3.骸灯

 まだ人類の文明が未発達だったころ、夜道を照らすのは月明かりと骸灯だった。

 骸灯は1〜3mほどの茎部と、その先端の発光体からなる。発光体は日中に光を吸収し、夜間 緑白色の光を淋しげに放つ。そして骸灯の根元には、宿主となった子どもが眠っている。

 骸灯は菌類の一種である。主として7歳前後のヒトに寄生する。寄生された子どもは夢遊病のような状態となり徐々に意識を奪われていく。十分に寄生が進行した宿主は、満月の晩にふらりと外へ出て帰ってこなくなる。その後宿主は自ら地面に穴を掘り体を埋めて眠りにつく。その上に骸灯は生えている。

 骸灯が光っている期間、宿主は生かされている。骸灯の寿命は個体差が大きく、数ヶ月で枯れるものもあれば数年光り続けるものもある。宿主の生命力に依存しているのだろうと考えられている。骸灯の光が消えると同時に、宿主も亡くなる。

 寄生してしまった骸灯を取り除く術は無い。宿主の親兄弟たちは「あの子は灯りに取られてしまった」のだと早々に諦める。骸灯の明かりは暗い夜道には心強く、重宝がられている側面もある。

 骸灯は、宿主が生前好きだった場所に生えるという言い伝えがある。実際人里離れた山奥に骸灯は生えず、大路や橋のたもと、民家のそばなどに多い。

 ともあれ緑白の哀しい光が、今日も夜道を照らしている。