意識を画面の中から話、外の世界に向けると蝉が鳴き始めた。ここ数日この声を聞いた記憶がないのが不思議なくらい力強い声だ。かと思うと、スッと鳴き止んだ。わたしが聞いた声は幻だったのだろうかと思うくらい、静けさが佇んでいる。
今朝は長い夢を見ていた。起き抜けには記憶がハッキリしていたが、今はもう、何やら忙しそうだったという質感だけが残っている。
昨日はジャーナルを書き着替えたあと、近くのカフェに行った。周辺の店をいくつか見たがそこだけがほどよく音楽がかかっていて心地よかったこと、ピーターさんが好きな店だということでそこに決めた。以前はもっとヒッピーみたいな人たちがたくさんいて、ライブミュージックが演奏される日には店の中も外も人が集まっていたよ、と、数組の客がいるが落ち着いた店内を眺めてピーターさんが言った。そう言えば「Bohemia」ってどういう意味なんだっけと、Bali Bohemiaという店の名前にも入っている言葉の意味についての問いが浮かぶ。「ジプシー」っていう意味もあるよね、などとピーターさんが答え、最終的にはそれぞれがスマホで意味を調べた。確かにジプシーと同義語という説明とともに、「世間一般の規範や型の外で生きる人、型にはまらず自由なさま」という説明が出てくる。最近の言葉では「ノマド」にも近いが、ノマドは生活様式を表すことの方に重心がある一方で、「ボヘミアン」はもっと生き方というか在り方を指す感じだ。
そんな昨晩の考えを思い出しながら「資格ジプシー」という言葉があるが、(資格にすがって)資格を取り続けるということで「ボヘミアン」の意味とはかけ離れた在り方に感じるなあという考えが浮かんだ。「ジプシー」は移動型民族を指していたということだが、そうではない暮らしをしている人から見るとふらふらと拠り所がないように見えたのだろうか。そうするとジプシーとボヘミアンは近しいが同義語ではないようにも思う。
庭を掃く音とともに、楽しそうに話をする声が聞こえてきた。塀の向こうで掃除をする人たちが何やら話に花が咲いているようだ。こういうとき、言葉がわからないと本当にいい。確かに少し賑やかだが、その内容はわからず、生き生きとしたエネルギーだけが伝わってくる。2023.12.25 8:30 Ubud Indonesia