枯れ葉を集め、焚いた火を囲んで、三者が互いを見つめあっている。一者は星首である。もう一者は道士の女。そしてもうひとり、道観の侵入者は、ぼろぼろの袈裟を着た僧だった。ぼさぼさの髪に、破れたうちわと酒の入った瓢箪を手にして、飲んだくれている。
この破戒僧が道観でいびきをかいて眠っていたので、女は星首をぶつけて叩き起こそうとした。壺で殴られたも同然だから、さぞ痛かったはずだ。しかし、破戒僧はなかなか起きない。やっと起きたと思ったら、道士の女を見るや口説こうとする。それを制し、経緯を聞くまでに一悶着。おかげで、ツヒネについての問答や、星首の宇宙に対して開きかけた悟りは、途中でうやむやになってしまった。
……寺を追い出されてからあてもなく彷徨っておるうちに、この界隈に行き着いたのだよ。
と、彼は呂律の怪しい口ぶりで言った。僧は、道済と名乗った。その名を聞いて女が眉を顰めたのを星首は見逃さなかった。星首自身は、その名に聞き覚えもなかったし、僧の顔に見覚えもなかった。
……して、そなたたちは? 私に負けず劣らず面妖だぞ。
……道士です。ここに眠る師と同じく、私にも真の名はございません。不便であれば、仮の名を千里とでもお呼びください。
道士の女は初めて名乗り、星首を見た。そなたたち、と呼ばれたことから自明であるように、この道済には星首の本当の姿が見えているようだった。すなわち、生きた首の存在を認識している。
……私は、見たままの通りの存在にて……。
……成程、成程。
道済は楽しそうに頷き、しからば、拙僧のごときがここへ辿り着いたのも何やらの巡り合わせ。星首殿、過ぎ去る景色を惜しんではなりませぬぞ、掴めぬことに憤る暇はございませぬぞ、と身を乗り出した。星首にもし首から下があれば、その両肩を掴んで揺すぶりそうな勢いだ。星首は当惑して、千里に目線を送ったが、彼女も道済の言うことの意味を計りかねている様子だった。