15.ちょっと進歩

aza_rashi
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目が覚めてキッチンへ行くと、中身が中途半端に残った梅酒のパックとウォッカの瓶が目に入った。3日前にこれらをがぶ飲みして4回吐いたことを思い出す。その時の匂いや霞んだ視界が鮮明に蘇ってきて吐き気がする。一刻も早く目の前から消し去りたくて、罪悪感を抱えながらも全てシンクに流した。部屋中がアルコールの強い匂いに包まれ、更に気持ち悪さが増していく。朝早くから荷造りをする予定だったが、一旦中止にしてベッドへ飛び込んだ。二度寝してしまおう。

昼過ぎに目が覚めると、アルコールの匂いはもう消えていた。今度こそ引越し準備に本腰を入れなければ。まず、本をダンボール箱に詰めていくことにした。自分の本棚をこうしてまじまじ見ていると、並べ方に性格が現れている。A型の割に几帳面さが欠けている私の本棚は、高さがあまり揃っておらず、色別に揃えるなんてこともしていない。ただ、一見無造作に並んでいるようにしか見えないこの本棚にも、私なりの美学は一応ある。明確な棲み分けを理解している訳では無いが、自分なりの解釈で純文学と大衆文学を分け、更にその他の学術書や詩集、短歌集、エッセイなどで分けることにしている。見た目は不格好だが、こうした分け方にすることでその時その時の気分で読みたい本を選びやすくなる気がしている。新居では少し違った並べ方をしてみようか。出版社別か、作者別か、あいうえお順か、まだ分からないけれどそんな事を考えてうきうきしているうちに全ての本がスッキリ片付いた。長いこと未読のまま積んでいる本はこの際実家に送ってしまおうかとも思ったが、積読は期間が長ければ長いほど熟成されていくという誰かの言葉を思い出し、持っていくことにした。次の引越しの時にも同じ本を見て、同じことを思っていたらどうしよう。どこまでも未読のまま一緒に旅をして、おばあちゃんになった頃に読むのも良いかもしれないなと思った。

@aza_rashi
日々のやわらか煮込み