引越しの日。準備は前日に大体終わらせていたから、ゆっくりと起きてランチパックのハムマヨネーズを食べた。引越し業者から、前の引越し作業が早く済んだから1時間前倒しでこちらに来ると連絡がくる。残りのパンを口に押し込んで急いでメイクをし、化粧品やヘアアイロンをダンボールに詰めた。ありがたいことに母が手伝いに来てくれており、私が新居の鍵を受け取りに行く間に母が積み込みの立ち会いをしてくれる事になった。
鍵を受け取り新居に着く頃には、もうすでに引越し業者が到着しており、家に入ると早速作業が始まった。私が1箱持つのにも苦労した、本がたくさんの箱をふたつ重ねてひょいひょい運んでいる。感心しつつ、特にやれることも無い私は部屋の中がダンボールに侵食されていく様子を隅っこで棒立ちしながらぼんやりと眺めていた。窓の外から猫の鳴き声が聞こえ、慌てて窓を開けたが姿は見えなかった。また来てくれるだろうか。1時間もかからず作業は終わり、代金を支払う。新居の側の細道にはトラックを止めることが出来ず、手作業で荷物を運ぶ手間が増えたとのこと。明細を見ると最初の見積もりより13000円も飛躍していた。悔しいけどどうしようもないから下唇を噛みしめながら泣く泣く支払った。
遅れて最寄りに到着した母と日高屋に入った。母はチゲラーメン、私はあんかけラーメンを注文して2人並んで麺をすすった。満腹になり、喫煙所に入る。1口目を吸ったところで白いLARKを持った女性が入ってきた。何故か私のことをじっと見ている。あまり目を合わせないようにしていると、そのタバコいい匂いね~と話しかけてきた。これベリーのやつなんですよ、と答えてラッキーストライクの箱を見せると、やーん!かわいい!若いっていいねー似合ってるわー!と言ってくれた。どうやら日高屋の喫煙所はいつもおじさんばかりで若い女子がいるのは珍しいのだそうだ。タバコを吸い終わるまでの間、色々な話をした。今日ここに越してきたことを話すと、おすすめのお店を教えてくれて、ここは良い街だと言っていた。
店を出ようとお会計をしていると、さっきの女性が笑顔で手を振ってくれた。小さく振り返す私を見て、母は不思議そうな顔をしながら、友達できたの?と尋ねてきた。そうかも。と答えた。