昔と比べると若手俳優を多数採用するような学園ドラマって減ったなと思う。そんななかで『ビリオン×スクール』は健闘したドラマだ。かつて生徒役で何度かドラマ出演を果たした山田涼介くんが、完璧なAI教師を作るデータ収集のために高校に先生として潜入し、問題児揃いの3年0組を結果的に救う大企業のCEO役で主演を務めた。
まず唸らされたのは、脚本の上手さと山田涼介くん演じる加賀美のキャラクターのベストマッチだ。学園ドラマの教師が言うことは、一歩間違うと説教臭くなりがちだけど、富豪ゆえの奇抜な行動と、俺様なのに憎めない加賀美のキャラクター設定がそこをかなり緩和している。言葉が生きているというか、説得力があるのだ。視聴者もまた加賀美の生徒で、その言葉に救われたり気づかされたりした。
このドラマで一貫してテーマとなっていたのは、いじめの加害者と被害者の関係で、加賀美も小学校でいじめを受けた経験がある。転落事故により記憶を失ったものの、加賀美は徐々に過去を思いだし、製作途中のAI教師であるティーチから自らの損傷した脳にAIが用いられているという事実を知った。これまでのサブタイトルで言われていた「AI教師」は加賀美自身だったわけだ。事実を知った後、加賀美は自分を完璧な人間だと思っていたけど、いまは不完全なAIとしか思えないと言う。
加賀美の秘書である一花の存在も忘れてはいけない。加賀美家に代々仕える芹沢家の生まれで、子どもの頃から加賀美と一緒にいたため、すべてを知りながら心に秘め、副担任という立ち位置で加賀美を支えてきた。二人の軽妙なやり取りは男女コンビが好きな人にはたまらないと思う。ラストで加賀美の秘書を辞め、空港で出発を待つ一花に降りかかった出来事と加賀美の言葉は、ほんとうに二人の関係性をよく表していた。
3年0組の同窓会があるとしたら、加賀美と一花は教え子たちにどんな言葉をかけるのだろう。続編はないとは思うけど、また彼らに会いたいと思う。3ヶ月ありがとう、いいドラマだった。