2025年9月26日

ba9co8
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公開:2025/9/26

サックリ切り落としてほんの少し短くなった指が、もう元に戻ろうとしている。皮膚だけではなくてお肉まで見えていたのに、どれだけ押さえても血が止まらなかったのに、傷が塞がるどころか肉が盛り上がって指紋まで戻りつつある。細胞なのかなんなのか、とにかくこの身体に備わった修復機能にほれぼれするばかりだ。しかし、人体において全てに可逆性があるわけではない。修復できるもの、ある程度修復できるけど元には戻らないもの、修復できないもの、がある。指先ほんの数ミリくらいなら、ちょっとした傷痕くらいで戻ってくれるんだろうが、ヘルニアで傷んだ腰は歩行を取り戻すことはできても元には戻らないし、それになによりあの痛みを受けとめ続けた脳がもう戻らない。腰痛がぶり返されるたび、あのときの生活の困難さを思い出されて、そして自分以外に理解されなかった苛立ちや悲しみが思い出されて、思考が行き止まりでもがいている。みじろぎ一つできずに脂汗をかきながら、寝返りに怯えて、階段に怯えて、椅子に座るのも恐ろしかったあの頃と、身体はもうすっかり違うのに未だに痛みがすりこまれている。指がこんなに治るんなら、脳だってすっかり治ってくれたっていいのに。