枠と旅のこと

bacco
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こんにちは、ばっこです。

ぽっぽアドベント2024、今年は「枠を壊せ!」がテーマとのことで、15日目の担当となりました。よろしくお付き合いください。

「枠を壊せ!」とのことですが、わたし自身は枠を壊すタイプの人間ではなく、できれば頑丈な石橋を叩いてしかも渡らないタイプだと思います。お話しできることがなかなか思いつきませんでした。枠にも種類があると思うのですが、今回はわたしの枠について。

去年も旅の話だったのに恐縮ですが、わたしの枠の話は旅についてです。

わたしの初めての海外旅行は高校の修学旅行でした。これで初めてパスポートを取得しました。しかしその後、特に海外に行くこともなく眠っていたそれを次に使ったのは香港旅行でした。

今でも覚えています、わたしが「美味しい中華が食べたい」と年上のお友達と話していたら「じゃあ香港行こうか」って話が飛躍したことを。わたしは横浜とか遠くても神戸を想定していて、突然飛び出した海外旅行に「ご冗談で?」と聞き返しました。もちろん冗談ではなく、仕事の早いお友達たちはさっさと良さげなフリーツアーを探してきて、本当に香港で中華が決まったのでした。

この時に「食事がしたいという理由で海外に行ってもいいんだ…」と目から鱗が落ちました。わたしにとって、そういう行動は漫画の世界の話だったからです。具体的に例を挙げるなら『有閑倶楽部』の剣菱万作みたいな人のやることでした。(『有閑倶楽部』は一条ゆかりによる少女漫画作品で、お金持ちの実家を持つ高校生の話です。メインキャラクターの剣菱悠理の父が万作であり、自由奔放さと莫大な資産があります)お腹を空かすために早朝からプールに向かい、高級中華ではなく香港人で溢れる飲茶屋で食事をし「本当にご飯のために海外旅行しちゃった…」と半笑いで香港を後にしたあの感覚は、確かにわたしにとって枠が壊れた瞬間でした。

その後は何度か香港に行ったり別の国にも行ったりして、わたしの中での海外旅行へのハードルが下がりつつある頃、映画が観たいという理由で香港に飛びました。食事がしたくて香港に行くなら、映画が観たくて香港に行ったっていいじゃない。この時は映画ホビット第2部の日本公開が遅くて(2ヶ月ちょっと遅かった)、ホビットファンのお友達が「どこでもいい、海外で観てやる!」となってそこそこ近くてわたしが案内できそうな香港に決まったのでした。短い日程に160分の映画を2回ねじ込み、おすすめの観光地もろくに回らず興奮しながら映画のことを話しみんなと食事したのはとてもエキサイティングでした。(映画は英語音声で中国語字幕ですが、話の筋は知っているのと漢字に助けられながら鑑賞し、英語が堪能なお友達に答え合わせしてもらいました)

外国で外国語の映画を観てもなんとか理解できるものなんだな、とどんどん楽天的になりました。これを受け、翌年にはロンドンで舞台を観ます。いや流石に悩んだんですけど、好きな俳優2人が同じ期間に同じ都市で舞台を踏むことはちょっともうないかな…って思ったのと戯曲は日本語で予習できる作品だったので…と自分に言い訳を重ねて。この時初めて海外現地集合をしました。滞在期間が被っていた友人が調整して、ロンドンでのホテルや食事を一緒にしてくれたからです。(本当にすっごく助かった)バッキンガムに行ったり(正門に回って見てみるのを忘れた)大英博物館行ったりアフタヌーンティ行ったりしたんですけど、最終日地方に向かうお友達と別れてからロンドンを適当に歩き回ってどこだかの教会の芝生で寝転んで水を飲んでた時に「外国の街を見ながらただぶらぶらするのって楽しいな」って急に気が付きました。大抵の海外旅行では何かしら目的があるし誰かと一緒なので、知らない街でルートも決めずに散歩することはあまりなかったからです。

その後、わたしの都合でお友達と計画した香港旅行がひとり旅になったのでぶらぶら旅を実行することにしました。途中で良さそうなカフェに入ったり甘味屋に入ったり公園で鳥を見たり饅頭食べたり海沿いを散歩したりフェリーに乗ったり、降りたことのない駅で下車して迷ったり。あまりに目的設定がないと散漫になりすぎるとわかって、目的地だけ決めて中距離バスに乗ったり。博物館美術館に行くとか、下調べしたレストランに行くとか、そういうことは決めずビーチに行くバスだけを調べたので効率は最低の旅でしたが、最高にドキドキしました。

そして今年です。5月と8月にソウルへ行きました。去年も同じことをしていますが、年に2回国外に出るというのもちょっとわたしには珍しいです。一度やってしまうとハードルが下がるんでしょう。これも枠だったのかもしれません。5月は市場の近くにフォトジェニックなホテルがあって、そこに泊まること以外は清渓川と漢江、2つの異なる川のほとりを歩きました。わたし自身は水辺に縁がない人生を送っていますが、川というものが都市構造や歴史において重要な役割を果たしていると考えているので一度歩いて実感してみたかったのもあります。とはいえ、川沿いでぼーっと飲み物を飲むとか、本を読むとか、写真を撮るとかそういうことしかしてません。正直いうと漢江も本当は暗くなってから行けば橋からの放水が綺麗にライトアップされてたし(昼間にバスで行った)清渓川はカップルが多くてちょっと肩身が狭かった。(でもベンチが多くて過ごしやすかった)8月は推し俳優のセンイルカフェへ。それ以外は基本ノープランです。そこでたまたま会った日本の方からおすすめの市内の博物館を教えてもらいました。その館内のカフェでコーヒーを飲んだのですが、調べてもあまり情報が出てこないカフェのせいか空いてるしコーヒーは美味しいし、すごく良かったんですよね。(カフェの人とは殆ど身振り手振りで言葉を交わしましたが、とても優しくて丁寧だった)わたしは普段ほとんどコーヒーを飲まないので余計に。韓国はコーヒー文化が根付いていて、素敵なカフェがたくさんあるんですが大体とても混んでいるので、偶然出会った美味しいコーヒーってなんだか凄い儲けものって感じでした。旅先の出会いでたまたま行動を変えてそこで見つけたものって、不思議と強く記憶に残ります。

これはわたし個人の問題ですが、学校の修学旅行などで無意識に叩き込まれたのか、旅とは「何か自分にとって良い経験となりうる目的を備えている学習機会であること」と思い込んでいた節があります。もちろん旅では様々な経験をしますので、それらは全てわたし自身の糧になっているわけですが、目的がないことを目的とするのはわたしにとって新しい旅の始まりでした。

こうやってわたしの旅の枠が変わっていってます。枠を壊すというか、枠を広げたというか、枠の外にも世界があることを少しずつ感じていっているように思います。枠とは自分で「ここまで」と決めてしまっているもので、本当は枠なんてないのかも。

わたしの枠の話はここでおしまいです。

明日はななしさんのアドベントですよ。お楽しみに!

@bacco
ばっこです。 韓国映画『名もなき野良犬の輪舞』が好きです。