広蔵市場でもし逢えたら

bacco
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はじめましてこんにちは、ばっこです。

ぽっぽアドベント25日目最終のトリを飾ります。なんでわたしなのって?何故ならはとちゃんに「君も書かないかい?」ってアドベント始まってからぶん投げられたから。だから書き始めたいまは12月17日というのはちょっと赤裸々なはなしだし、わたしの筆致が急足でも許して欲しい。

今年のアドベントテーマは『NEW WORLD』とのこと。アドベントへのURLはこちら。https://adventar.org/calendars/8747

わたしからは今年はじめて訪れた韓国旅行のおはなし。よろしくどうぞ、お付き合いください。

はじめまして、ソウル

さて、なぜ今回韓国かというそもそもの興味の発端ですが、それはわたしがにわか韓国映画ファンであるからです。

2017年ごろに韓国映画の魅力にはまり、肩まで浸かって韓国映画の同人誌を出し、いまに至っております。順調ですね。最推しは映画『名もなき野良犬の輪舞』(以下『不汗党』とする)です、よろしくね!

『不汗党』はソル・ギョングとイム・シワン主演の韓国ノワールです。

いつか韓国に行きたいなぁなんてグズグスしている間にコロナ禍に突入し、体調を崩して手術などもしたりして、気が付いたら2023年でした。何年も時間はあったのに韓国語の勉強もせず、観ていた映画がほぼ暴力映画なので口にしてはいけない汚い言葉しか覚えていない、そんな状態で転機はやってきた。

今年のある日、正確には3月18日。肉の塊を食べる席で友人のSさんが「Bさんと韓国で飛行機のチケットを発券するから、ソウルに行くんだよね」と意味のわからない事を言い出したので、その場にいたGさんとわたしは「お、じゃあ我らも行くか。現地でご一緒してご飯でもどう?」と盛り上がる。

前にもSさんからソウル旅行の話は聞いていて、市場に行きたいねなんて話してたからです。

もともと海外旅行へのハードルが低い仲間ばかりだったので、これが酒の席の戯言では済まず、本当に韓国行きが決まりました。ずっとぼんやりと「そのうち行ってみたいな」なんて思ってたのに、決まる時はこんなもの。勢いと流れに身を任せ、職場から休みをもぎ取り、私はGさんと5月後半に決まった旅程を詰めていきました。

さて、Gさんはドラマ『怪物』、わたしは映画『不汗党』が現時点で最推しの韓国映像作品です。しかしながら、そのどちらも作品の舞台はソウルから離れていたため(『怪物』はマニャン、『不汗党』はプサンが舞台です)今回は訪れるのを諦め、その代わり青瓦台がいまは一般公開されているからここには行こう!と2人で決めたのでした。(※青瓦台は2022年の5月まで韓国の大統領府でした。映画やドラマの舞台として登場することがあります)

よーしまずは航空券だな、と夜間通話しながら某社のチケットを買おうとして2人揃って何故か購入に失敗した。どうもカード決済が完了しなかったらしい。でも一度ちゃんと画面は切り替わって2人とも予約番号が出たんです、本当なんです。こんな感じで出始めにメチャクチャにケチがつきました。チッ。

これが3月末あたりのこと。

4月になって、長らく旅行なんて行っていなかったわたしは、一度手持ちのスーツケースを出してきてサイズの確認をしようとしました。物置きの中からえっちらおっちら引き出してみたところ、なにか黒い破片がぱらぱらと落ちる。見ればスーツケースの持ち手が、バキバキに割れていく…。わたしの手の中で小さく砕けていく哀れな持ち手よ…。おそらく素材の経年劣化です。外物置きという環境の悪さも手伝ったのかもしれない。となれば、同じ素材のパーツは負荷が掛かれば同様にバッキバキになるんでしょう。皆さんもお気をつけて。

持ち手が崩壊したスーツケース

結論として、買い替えました。

修理代金聞いたら、買い替えてもあんまり差がなかったんだもん。スーツケースは年々進化して軽く使いやすくなっていますから、新しいものを買った方がよかろう、という事になってわたしはきれいな水色のスーツケースを買いました。ヤッタネ。汚れと傷が目立つかもしれないけど、たぶん見つけやすい。

綺麗な水色のスーツケース

あけて5月初め、宿泊先も決まります。Gさんのフォロワーさんからお勧めの地域を伺い、我々は慎重にホテルを選定しました。場所は忠武路。そこそこ清潔でバスタブがあるホテルです。海外に行くと結構バスタブないホテルって多いと思いますが、ソウルもそんな感じ。

5月6日。Gさんと旅行の打ち合わせがてら六本木の美術館で会いました。お昼を食べ、青山霊園を横切って散歩しながら表参道でクリームソーダを飲み、蕎麦屋で一杯やって解散するまで、我々はなんの打ち合わせもしませんでした。どうも我々は細かく計画する旅行に向いてないタイプらしい。らしいと言うのは、我々が2人で一緒に旅行した事がないからです。「まぁどうにかなるだろ」

これは青山で飲んだクリームソーダ。この店は大抵空いている。

この無計画性が終盤の我々を襲うとも知らず。

そうだ、お金の話なんですけど、韓国ウォンは日本で用意しました。レートが悪いのはわかっている。でも羽田で両替する気はもっとないし、現地でどこ行ったらいいかよくわかんないだろうと思ってある程度だけ。円安を心から憎みながら両替しました。

そう、わたしはどうしても現地通貨を用意していかないと気が済まない。何故ならリーダーがクレジットカードを読まなかったり、レジが壊れてて「Out of order」って殴り書きされてたり、人生では、旅では、現金ないと詰む事がある。突然そういうことが起こる。例えば空港に着いたその時とかにも起こるのだ。起こった事があるのだ…。

走ればっこ(一日目)

旅の準備を進めながら比較的真面目に仕事したり、原稿書いたりしているうちに5月は飛ぶように進み、とうとう出発日になりました。5月27日、羽田空港です。朝です。

羽田空港第3ターミナルEカウンター

我々はちゃんと早めに待ち合わせたつもりでした。Gさんの電車が少しだけ遅れたのと、わたしが荷物預けていい?ってお願いしちゃったせいで時間がかかったのは確かですが、それにしたって出国のセキュリティチェックが見たこともない長さの列になってる!!!

羽田空港の第3ターミナルは、チェックインカウンターがAからNまであります。Eカウンターの近くに保安検査場(中央)への入り口があって、たいていの場合はそこから幾つか九十九折りになってから目の前のEカウンターあたりまで人が並んでいるんですが、この時は列がEカウンターの前から更にずっと流れてLカウンターまで続いていたんです。建物のほぼ端っこです。

羽田空港第3ターミナル地図

保安検査場(北)もあるじゃん?って思うでしょ?わたしもそう思う。いまはどうか知らないけど、北は閉鎖してるんです。稼働してるのは中央だけ。

我らの前に立つ英語圏のカップルは「ハハハ、列に並んでるだけでこの空港の全部を見て回っちゃったよ!」とか冗談言ってましたが、ほんとに、こんな列いままで見たことない。混んでるって聞いたけど、これはちょっと想定外じゃん〜?!?!間に合うのか?間に合うのか?とGさんとヤキモキしながら荷物検査を通り、出国審査に並ぼうとしたところ、私たちの前に並ぶ女性が「お急ぎなら先に…」と大変親切に譲って下さいました。後光がさしてる。

お礼を申し上げ倒し、出国審査を抜けて、もう時間がない。だって搭乗ゲートがよりによって端っこなのだ。全く盛ってない。紛う事なく端。上図の地図の左上に142って数字が見えますか?そこです!そしてあと10分くらいしかない。

よかった、スーツケース預けておいて!いや、あの時荷物預けなければもっと早く入れたのか???どっちにしろ今身軽だから走れる!

羽田空港で疾走したことがあるか?わたしはなかった。今年までは。

汗だくで飛行機に滑り込み、ほっと一安心。そうやって搭乗した飛行機は整備のために1時間遅延しました。あるよね…そういうことってあるよね…。

羽田空港搭乗ゲートへの道のり。左手に見える143ゲートの先の142が我らが目的地。

羽田空港で全ての体力を使い果たし、機体は無事に金浦空港に到着。お昼くらい。韓国ではまだこの頃、入国審査の前に検疫情報システムのアプリ画面確認があったんですが、(これはこののち7月に廃止されています)この確認に長い長い列が出来ていました。そして入国審査の列がなかなか進まないのはどこの国も一緒。ここで、別便で先に到着していたSさんと合流。

金浦空港から地下鉄に向かうエスカレーター付近。

そうだ。わたし、今回の旅ではじめてeSIMを使ったんです。すごい便利!便利〜!もう次から海外旅行ではeSIMしか契約せんぞ。というくらい便利。

今まではポケットWi-Fiを借りてたんですが、結構荷物になるんですよね。あれって基本的に充電機器も付属するので。

でもeSIMなら物理的なレンタル品はないし、準備さえしておけば現地でちょいちょいといじったら簡単にネットに繋がるし、現地の電話番号も手に入る(わたしが知ってるのは受信のみですが)。話には聞いてたけどマジでeSIMはお勧めしたい。

ソウル駅まで空港鉄道で出る前に、交通カードが欲しい。という事でコンビニでTmoneyカードを購入するも、ウロウロした結果チャージは現金のみということがわかる。クレカは使えない。WOWPASSにすればよかったのか…!!!(こちらは外貨のまま入金できる。たぶんクレジットカードからも出来る)

この時点でまとまった韓国ウォンを持っているのがわたしだけなのですが、韓国は公共交通機関がわりと安く利用できるのでチャージはあんまり困らなかった。

この辺にろくに調べずに来ている気配が濃厚に漂っていると思いますが、その通りです。Sさんとソウル駅で別れてお互いのホテルにチェックイン。

ホテルのロビーフロア。

はじめての国、はじめての街、はじめての地下鉄。楽しい。脳汁が出る。勢いよくアドレナリンがリンリンしているのを感じる。ひとつひとつクリアする毎にドーパミンもミンミンしている。

わたしが旅好きなのは、このドーパミンでアヒャヒャとなっているのを脳が学習しているからとしか思えない。これってあんまり大量に出ると依存症になったりするって聞いてんだけど、マジ?

さてソウルはこの日、雨。折り畳み傘は最近買ったトラディショナルウェザーウェア。外側は濃いグレーで中が蛍光グリーン。レイングッズは気分が上がる物がいい。

ひとまずなんか軽く食べようぜ、という事でオシャレなパン屋でSさんと再合流してから目的のひとつ、広蔵市場へ向かいます。

パン屋のカフェスペース

ソウルにはいくつか市場があって広蔵市場もそのうちのひとつ。飲食以外にも繊維関係や厨房関係その他の商店が集まる巨大な市場です。気軽に屋台の食べ歩きができるので、観光客が大量に行き交い活気がある場所ですが、店が多過ぎてどこに入ったらいいのかわからん。もしかしなくても下調べゼロで行くべきじゃない。

広蔵市場
広蔵市場

とりあえず、ブラブラッと歩き回ってなんか良さそうなところを決めました。女性が2人で切り盛りしている。

市場の屋台は基本的に現金決済になるので(たぶん電子決済もできるけど、わたしはその手段を持ってないしわからなかった)、わたしの持つ現金が頼みの綱になる。このあと合流するBさんに慌てて「市場に来る前に韓国ウォンを用意しておいてくれ」と連絡して貰う有様である。この時点で財布出すのめんどくさくなって現金をポケットに突っ込み始めるわたし。いつもこう。

わたしにしては珍しくビールなど飲みながら、屋台ご飯。細巻きのキンパ美味しい!すき!おでんはピリ辛い。チャプチェも餃子も美味しかった。

みんなぎゅうぎゅう座りながらワイワイ食べるのはほんとに楽しい。韓国語が出来たらお店の人ともっとコミュニケーション取れて楽しいんだろうな。

細巻きのキンパ、おでん、ビール
餃子
チャプチェ

ここで合流したBさんと4人で(やっぱり一度ぐるぐる辺りを彷徨ってから)カルグクスのお店に向かう。ここはNetflixの番組に出て有名なところなので混んでるけど、料理が出るのも早いしみんな食べたらすぐ席を立つので回転も早い。

カルグクス。シンプルで美味しい。

さらにもう一軒、いい具合に強そうなおばちゃんがやってるお店に。写真撮らせてよ、とお願いしたものの「ダメダメ絶対だめ!」と恥ずかしがられてしまい、残念ながら店主の写真はなし。市場はみんなみんな、女性がお店をやってる気がする。なんでなんだろう。

トッポギ、ソジュ、マッコリ。
積まれたスンデ。

賑わいをあとにして1日目が終了。雨の街ってのもまたいいよね。

夜、雨のソウル。

世界は狭い(2日目)

2日目も雨。まぁね、そういうもんよね。

朝ごはんは歩いていける場所のお粥屋さん。韓国のお粥、はじめて食べた!というか、実はまだあんまり韓国料理を食べた経験自体が少ない。とても美味しい。香港でもお粥を食べるのが好きだけど、また違う。あとパンチャンというの?おかずが美味しい。

確か鶏肉のお粥。
お粥屋さんの外観

お店のお姉さんがたいへん日本語の堪能な方で、そしてとても優しいです。日本人のお客さんも多いみたい。

明洞でお土産が買いたくて、オリーブヤングという化粧品なんかがたくさん売ってるチェーン店に行ったんですけど、いやもうわたしみたいな観光客でいっぱいですし、商品も盛りだくさんですし、なんかよくわかんなくなってとりあえず職場のみんなにとバカ売れしてそうなフェイスパックなどを手に取ってレジに並びました。そこで声を掛けられた。

「羽田空港でお会いしましたよね…?」

1日目冒頭の羽田空港の事を思い出してください。我々に先を譲ってくれた、後光のさしてる女神がいたでしょ!あのひと!に!声を掛けられた!嘘だろ!!!!!よもやソウルで再会すると思わないじゃん!!????

世界って狭い。悪いことは出来ない。してないけど。恥ずかしいことはしないように生きていかないといけないな。

さて、韓国ではファンの方が企画してセンイルカフェというイベントを行う文化があります。直訳して「お誕生日カフェ」、推しの誕生日に推しイメージのカフェをファンが運営するんですね。わたしも完全にはまだわかってませんが。

同行のGさんより、ソウルに着いてから「推し俳優のシン・ハギュンさん(『怪物』の主演)が誕生日でセンイルカフェがあるんだけど行かない?」とお誘いを受けてホイホイ着いていきました。わたしも好きな俳優さんですし、センイルカフェとか生まれてはじめてですし。Gさんのお友達のHさん(ご家族とソウルにいらしてた)とも合流してカフェに向かいました。

センイルカフェ外観
カフェの内観。壁に貼られたたくさんの写真など。

中も外も推しで埋め尽くされとる…!

中ではファンの皆さんが推しの話をしていた(たぶん。何故なら韓国語がわからないから)。すごく、すごく楽しそうな雰囲気である!推しにメッセージを書いたりもしている。

ここでドリンクを買うと、ドリンクホルダーよろしく飲み物の入ったカップに重ねて、オリジナルのペーパーカップがついてくる。みんなこれを持って帰るんだけど、わたしはこんな物が貰えるのを知らなくて、どうやって潰さず持って帰るかずっと考えてた。

無事に持ち帰ったオリジナルペーパーカップ

店内には【持ち帰っていいよ】グッズ(ファンメイドの印刷物など)のコーナーが出来ていて、そこにドサーっと置いていったり、お好みのものを持っていったりしている。

ファンメイドの印刷物の一部

Hさんは界隈で知られた方なので、ひっきりなしにいろんな方が挨拶に来られていた。わたしは見せて頂いた『怪物』のBlu-rayBOXの特典に「ヒョエー!ホワー!」などど奇声を上げたり、日本語がたいへん堪能なKさん(初対面)とヨ・ジングさんの話で盛り上がったりしていた。(ヨ・ジングさんとは『怪物』のもう1人の主演で、わたしは日本のファンクラブに加入していた)そして「あれも持っていきなよ、これもあるよ」みなさん大変親切なんである。同じ推しを持つ同士の、なんともいえぬ連帯感が漂っている空間だった。

晩御飯はホテル近くのお店にしようと向かったものの、どうもこの日はやってないらしい。シャッター閉まってる。ので、急遽別のお店を調べてダラダラとご飯を食べたりしました。わたしは驚くほど食欲がなくてあんまり記憶がない。

もしかして(三日目)

雨がやんだ!天気は薄曇りくらい。

この日は青瓦台に向かうぞ!ということで、オープン時間に合わせて近隣の有名なベーカリーカフェに向かうことにする。ホテルはチェックアウトして、スーツケースだけ預けたんだけど、ロビーフロアの隅っこにかためて置かれるだけで若干不安。そういうかんじ〜????スーツケースの中はパンパンになってしまった。

ミチミチに詰まったスーツケース。シン・ハキュンさんのセンイルカフェでもらって来たデカいカードがにこやかにこっちを見てる。

カフェに着いて、もう開店時間のはずなんだけどなかなか列が動かない。そう、ここは列ができる人気店。おかしいなって思ってInstagramを検索する。こういうオシャレな店はInstagramアカウントを持っているに違いない!という直感は当たっていて、確認したら今日は祝日だから開店時間がいつもより遅いって書いてある!しまった、お店の時間に合わせてたら青瓦台に間に合わない。仕方なく周辺で開いてそうな店を探して彷徨くと可愛いお店があった。

PAPER &CUP外観。薄いピンクの壁で可愛い。
カップケーキと瓶に入ったアイスミルクティー

カップケーキとお茶が飲めるこじんまりとしたお店。見た目がもう可愛い。コーヒーもあるけどお茶が飲みたかった。美味しい。ミルクティーが瓶に入ってるんだぜ、可愛い。

ここから坂道を上ったりしながら歩くと青瓦台に近づく。この時、わたしとGさんはちょっと嫌な予感がしてた。本当はしてたけど、2人ともその事は口にするのを避けてた。何故なら青瓦台周辺の道路に車両封鎖時間が告知してあったから。どゆこと?って思うじゃん。9時からはじまるってある。

「政府行事による交通規制の案内」と書いてあるらしいお知らせ

閉まってた。

青瓦台閉まってた。下調べの中途半端さのツケがここに来た。

調べてたんですよ、何時に開いて何が必要でって。火曜定休、9時にパスポート持参、先着制。でもなぁ、例外的に今日が閉まってるとはなぁ…。

わたしたちと同様に知らずに来ちゃった人たちが柵の向こうの男性に「どうなってるんだ?」的なことを聞いている。「いや〜すいません、今日は開いてないんですよ〜」という返事も聞こえる。全部韓国語で、わたしは全く韓国語がわからないにも関わらず、この時彼らのやりとりに字幕かボイスオーバーでもついてるのか?って具合に理解できた。Gさんもそうだった。2人で顔を見合わせて、その場からサカサカと離れながら「どうする?」「どうすべ」と言い合う。ひとまず、近隣にある『青瓦台サランチェ』という施設に向かった。観覧無料の展示施設である。開館時間ぴったりに滑り込み、展示をざっと見て回った。ごめんな、ここもあんまり記憶がない。トイレが綺麗で大きいベンチもあるので、Gさんと計画を練り直す。幸いにして青瓦台の目の前は景福宮である。そこには国立古宮博物館がある!博物館は大好きだ!決定、博物館へgoである。

青瓦台サランチェから見える青瓦台。見学したかった。

景福宮の壁沿いに進むと、なにやら華やかな韓服を身に纏った男女をたくさん見かけた。あとで調べたところ、韓服を着用すると景福宮への入場が無料になるんだそうで、レンタルついでに観光に来ているってわけなんだろう。家族みんなで着ている人もちらほら見かける。このため景福宮の周辺にはたくさんのレンタル衣裳店が軒を連ねていた。浅草の着物レンタルみたいなもんかな。写真映えもするので、じっくり撮影している人もいる。カップルで揃いのデザインもあるらしくて、老いも若きもヒラリヒラリとそぞろ歩いていた。

古宮博物館に向かうと、なにやら人が向かうところがある。これから衛兵交代式の再現が始まるのだという。ナイスタイミング。これらは観光的なアトラクションですが、色鮮やかな衣装の隊列、楽隊の伝統的な音楽はなかなか壮観です。

景福宮の守門将交代式

20分ほどの交代式を見学して博物館へ。こちらも入館無料。主に朝鮮王朝時代の華やかな衣装、絵画や家具などの展示が主体ですが、個人的には天文分野の展示が面白かった。そして展示を見ればわかるけど、どうしたってわたしの母国がこの国にした事は展示の端々に現れる。ジワジワと侵略の手が伸びている事がわかる。直接的な文言はなかったと思う。もしわたしが10年前にここに来ていたらわからなかっただろう。わたしはあまりにも隣国のことに疎かったから。だから、訪れたのが今で良かったとも思っていると同時に、身の置き所のなさがある。

国立古宮博物館入り口
渾天儀。天体運行の観察のために使われる。
博物館のキャラクターらしい亀。

このあと近くでお昼を食べたのに写真はない。明るいおばちゃんがやってる食堂だった。

最終日なので、スーツケースをピックアップしたら金浦空港に向かうしかない。もう???あっという間すぎない?結局、青瓦台行けてないし?????そして今になって晴れてくるし????

金浦空港出国エリア

名残惜しいけど、出国するしかない。なお、金浦では荷物預けのあとに待機時間があって、モニターに映るスーツケースを視認し自分の荷物が無事に流れた事を確認してからでないとその場を離れられない。わたしはスーツケースに間違ってカメラの予備リチウムイオン電池を入れてしまって、検査室に呼び出しをくらった。すいませんでした。

さて、旅には終わりが来る。非日常性はいっときの事で、いつか終わる。今回は駆け足の旅だ。さらっと撫でたような。わたしを変える大きな経験でしたとか、新しい発見がありました、とかそんな事は全然ない。友人との気軽な旅だった。なんならこれを書いてる12月現在も、韓国語の勉強にも手を付けてすらない。恥ずかしながら不真面目な人間なので。それでも、わたしはこのあと、8月に1人でソウルとプサンを1週間ほど旅行してる。5月の経験がなければ、1人で行こうとはしなかっただろう。

新しい世界は一足飛びにやって来ない。わたしの新しい世界は、徐々に近づいて来てる最中だ。どんな世界がやって来るのかはまだわからない。イチにのさんで飛び込む前の、その準備運動くらいにいる。でも明らかにはじまってる。

2023年のアドベントはこれでおしまい。

みなさんは新しい世界と出会いましたか?

@bacco
ばっこです。 韓国映画『名もなき野良犬の輪舞』が好きです。