世界をなめらかにするとは具体的にどういうことなのか?
なめらかというと直感的には理解できるが、言語化するのが難しい。そこでなめらかな社会とその敵を読みながら、「なめらか」という状態を具体的に言語化し、理解しやすいようにしてみたいと思う。下記は本書から抽出したなめらかという言葉の意味である。
・膜の内側にある資源を外側に越境するように力強く流すこと
・膜の内側にある資源を囲い込み溜め込もうとする力を弱くすること
・生命の非対称性を維持しつつも内側と外側を明確に区別することを拒否する状態
・グレーで曖昧な状態である ・社会の境界がはっきりとせず曖昧になっていく
・価値と文化の多様性は維持されつつも、国境という概念は無くならない状態
・膜という組織への帰属意識を曖昧にし、共有すること
なめらかにするための実装はどのようなものがあるか?
・貨幣システムの開発
・投票システムの開発
・分人民主主義へのシフト
・構成的社会契約論
・教育
・メディアの実装
など
貨幣システムは組織を仮想化し、伝播委任投票システムによる分人民主主義は個人という概念を解消して投票による意思決定をなめらかにしている。
鈴木健氏は、伝播投資貨幣(PICSY)や伝播委任投票システム、分人民主主義、構成的社会契約論などの実装には時間を要し、瞬時に実装できるものではないと考え、スマートニュースというインターネットメディアを運営している。
インターネットメディアを実装することは世界にさまざまな国家が存在し、その中に多様な政党があり、人々の生き方や思想があるという認識を手にできる。そしてメディアには情報を伝搬を通じて、組織への帰属意識をなめらかにする力がある。
なめらかにするために着目した地図というメディア
通常のメディアには、テレビ報道や新聞などのマスメディア、ニュースアプリやキュレーションサイトのようなインターネットメディア、Facebookや Twitterなどのようなソーシャルメディアがある。 メディアというと情報や記事を掲載しそれを伝播するイメージすることが多いが、僕はある別のものに着目した。
それが 「地図」 である。
メディアの本源的な意味は「媒介」であり、その言葉の語源は、ラテン語の「medium」の複数形である。mediumは、17世紀ごろには「中間」「介在」といった意味で主に用いられていた。
地図のどのような点にメディア性があるのか?
それは、地理的な世界を表現すると同時にその所属意識を形作る点である。
地図の想像力では地図というメディアの性質について以下のように説明している。
人々が「現実」を認識し、そのような現実を多くの人が受け入れるのも
地図という媒介を通してである
つまり、地図を通して現実を認識し、帰属意識へフィードバックするという一連の構造が地図にメディア性を与えている。
現実の認識 ↔︎ 地図 ↔︎ 帰属意識
このように地図にはメディアとしての性質があり、世界をなめらかにする認識を人々に与えることが可能だと仮説を立てた。
地図を拡張してミラーワールドへ
僕はこの地図をさらに3次元化し、地方や国境を意識できる地理性、アバターという自身の分身を操作できるゲーム性、そして友人や外国人などとの交流が国際的に可能なソーシャル性を組み合わせた 「ミラーワールド」を実装して、世界の境界線をなめらかにしたいと思う。
最後に
なめらかにするとは人間の代謝活動のように内側にあるリソースを外側に力強く流すことに似ている。 アバターを使い身体性を伴った状態で世界を体験できれば、従来の2次元マップによって制限されてしまっていた自身の想像力を国境の外側へと押し流し、世界をなめらかにできるのではないだろうか。