※そんな時はない
①眼鏡
今の自宅用を持ち歩き用に、持ち歩き用にしているガタガタのやつを非常用持ち出し袋に入れたい。ガタガタのやつは、つるが曲がってしまっており、いざ避難先でしばらくこれしかないとなったら正直耐えられる気はしない。しかしないよりマシだから入れておきたい。これは余裕がある時というより優先して早く買いましょう。
自然界でこんなに視力が弱かったら即時淘汰されてしまう。人間は文明により生かされている。
②ハルタの革靴
スポックシューズを色違いで愛用しているけどベーシックなコインローファーもほしい。ヒールのあるスポックシューズもほしい。
半年くらい前にヒールのあるスポックシューズを試着したら、通常のスポックシューズとサイズ感が違っており、いざ買う時のために覚えておこう〜と思っていたのに、忘れた。
まぁ本当に買うのならその時改めて試着すればよい。都会はハルタの店舗があるから嬉しい。
書きながら、古着屋さんでデッドストックのフランス軍のドレスシューズを買って靴底のゴム張りまでしてあるのを思い出した。
履いて柔らかくしようと思ったけどあまりにも痛くて出番がなく仕舞ってしまった。3歩進んで2歩下がる感じの散歩でもするか……。
③ジェリーキャットのドラゴンのぬいぐるみ
先日駅ビルの雑貨屋さんで見つけてあまりのかわいさにびっくりしながら駆け寄ってしまった。
ふわふわとろとろでとっても優しい姿のピンクのドラゴンと緑のドラゴンが仲良くくったりと横たわっていたらそれはもう買うしかないでしょう。そうでしょう。
と思って値札を見たら1匹14,300円でとてもびっくりした。
でも全然高いとは思わない。かわいさに見合った値段で恐れ入った。
普段から、納豆138円を買うのに渋るくせに(セールで98円になる時があるため)、すごくほしいと思ったものにはわりとポンとお金を払ってしまう。今回も買ってもいいなとは思っている。
しかし家にはすでにたくさんのぬいぐるみがいる。正直、全てのぬいぐるみを愛しきれているとは言い切れない。
籠の中にひしめきあう彼らのことを思い浮かべ、ひとまず帰宅した。
しかし翌々日、別の駅ビルで同じドラゴンたちを見つけて、やっぱりどうしてもかわいくて、30分くらい周りをうろうろして悩んだ。
気楽な独り身社会人の皮算用により、
14,300円×2匹=28,600円
12ヶ月で割ると1月およそ2,383円……まで計算し、それだったらなんだかとっても安いじゃない!という気分になった。
しかし、自由にお金を使えるようになってきたここ数年、欲しいと思ったものを買って手にした瞬間、湧き立つような気持ちがすっと落ち着いてしまうことがしばしば起きる。
今回も同じように簡単に買ってしまって、満足して部屋の片隅に据えられ、砂糖菓子のようなふわふわの鱗をうっすらとくすませてしまうのはよくないな、嫌だな、と思いとどまった。
(なにせ服や化粧品などと違って、着ることも使うこともしないただそこに置かれて埃を被ったかわいい物体が、14,300円なのだ。)
こうして憧れて姿形を思い浮かべてうっとりしたり焦燥感に囚われたりしている時が一番楽しいのかもしれない。この感情が恋なのかもしれない。何らかのホルモンが分泌されてせめて顔の吹き出物が治ればもうけものである。
とはいえ、いつか絶対にこのドラゴンたちと暮らしたいと思っている。今いる家、もしくは引越した先で持ち物を整理して、天国の雲の上のような空間を作ってから彼らを迎えたい。
わたしが最も恐れているのは、そうこうしているうちに彼らが廃盤になって生産されなくなってしまうことである。そうなるのであれば前述のつまらない理屈はすべて横に置いて今この時買うしかないのだけれど、売れてしまった場合再販するのかな?限定生産とかだったらどうしよう……。ロンドンのメーカーなのでそのあたりがよくわからない。今度店員さんに様子を聞いてみようと思う。あまりわからなそうではあるけれど……。
買わない理由をつらつらと並べる醜い文章になってしまった。でも今はそれでいいのだ。恋に似た感情をせいぜい楽しむがよい。
ほんとうにかわいい。そろそろ夢に出てくると思う。
夢に出てきて、「それよりも早く眼鏡を買いなよ」って優しく諭してくれると助かる。
寝る前に覚え書きのつもりでつらつら書いていたけれど、ぬいぐるみの話になったら途端に語り口がおかしくて読み返したらびっくりした。しずかなインターネットのおしゃれなフォントでも隠しきれないオタクの早口がそこにあった。
おわり