頻尿なので、念のため膀胱のエコー写真を撮ることになった。私にとっては初めての検査だ。
当日は適度に水分をとった後、1時間ほどトイレに行かないようにと事前に言われた。尿を溜めて膀胱を膨らますことで、膀胱内部や周囲の臓器が確認しやすくなるという。
家を出て病院の検査室に着くまで45分。受付をすると、「尿は溜まっていますか?」と聞かれ、「はい」と答えた。10分ほど検査を待つ間、もともと頻尿なせいで下腹部がソワソワしてくる。普段だったらトイレに行く状況だ。
順番になり、医師が手際よく下腹部にセンサーを当てる。すると、「あれ、全然尿が溜まってない。これだとしっかり検査できないけど、あと30分から1時間我慢できそう? 無理ならこのままでも検査は可能だけど」。腎機能の低下などにより、尿を溜めにくい人もいるため、無理強いはしないとのことだった。
そもそも、主治医からMRIを提案されたが、私はバリバリの閉所恐怖心のため、エコー検査に変えてもらった。もし、膀胱の写りが悪ければ、MRIを受けざるを得ないかもしれない…(本当は高精度な検査を受けられる境遇を喜ばねばならないのに、恐怖心に負けてしまう)。
尿我慢<MRI恐怖。待合室に戻って待機することにした。受付で「膀胱満たん」という札を渡された。膀胱の声に耳を澄まし、受付に札を出すタイミングを図る。
早く尿を溜めるために水を飲み座っていると、下腹部がソワソワして落ち着かない。そこで、院内のコンビニに行き、貼るホッカイロを購入。下腹部に貼って温めるとソワソワ感が和らいだ。普段もこうやって尿意を紛らわしている。
そうこうするうちに20分。膀胱がへそのあたりをコンコンコンとノックしてくるような、強めの尿意になった。「本当に溜まってるの?」と聞くと、膀胱は「おう」と返答。予定より早いが、改めて検査を受けるときが来た。
受付に「膀胱満たん」の札を出す。すると、「えーっと、まだ20分ですので…早いと思うのですが…」と、信用されなかった。一度膀胱満たんの判断を誤り、医師を煩わせているのだから当然と言える。「で、ですよね…」と苦笑いし、私は札を握りしめて席に戻った。
そして5分。ドンドンドン! 膀胱のノックが激しくなった。「出るぞ! トイレに向かえ!」と言っている。一般の人はこんな状態でも排尿を我慢しているのだろうか…。普通の尿意がわからない。でも、医師に迷惑をかけてはいけないから我慢しよう。
ドンドンドン!
ドンドンドン!
なんだか頭がクラクラしてきた…。それに、ここで盛大に漏らしてしまったら…。ああ、しょうがない。膀胱の声に応えよう。
勇気を出し、「やっぱりお願いします」と受付の人に言うと、札を受け取ってもらえた。さらに5分。ハラハラしながら、検査の準備が整うまで待った。
いよいよ順番が来ると、「あら! 今度はパンパンに溜まってる! これならしっかり検査ができますよ」と先生。はぁぁ、よかった! 膀胱の声は本当だったんだ! 「あの…先生、我慢したせいで、今ギリギリの状態なんです」と言うと、ありがたいことに検査を急いでくれた。さらに「膀胱のあと、他の臓器をみる前に一度トイレに行ってもいい」といううれしい提案も。ただ、私はこのあと尿検査があったため、それは敵わなかった。
先生の配慮により、検査は10分もかからず終了。大慌てでトイレに向かい、尿検査も無事に終えられた。
普段からよく働いてくれている膀胱にとって、今日はいつも以上に重労働だったはず。「ありがとう、お疲れさま」と労いながら家路についた。
ちなみに検査結果は問題なかった。