東京の雪を甘く見て痛い目にあった日

bataco
·

数年前の夜、東京で珍しく雪が降った。私は久々に会う友達との食事が楽しみで、天気予報を大してチェックもせず家を出発。渋谷についた頃には雪は数センチ降り積もっていた。店で友達と合流し、2人でわいわいと食事。まだまだ話足りず、雪がしんしんと降り積もる中、2軒目へ。23時を過ぎ、ようやく帰ろうとすると、すでに10センチ近く積もっていた。

友人は地下鉄、私はJRで、それぞれ帰路についた。週末にしては珍しく空いていた電車は、自宅最寄り駅の3駅前で停車。するとそのまま動かなくなった。「まぁしばらくしたら動くだろう」と呑気にスマホを見ていたが、一向に電車は動かない。ドアを開け放したまま、「復旧の目処がついていません」というアナウンスが流れるばかり。車内は寒いし、トイレにも行きたい…。30分ほどするとチラホラ降車する人が現れ、私もそれにならうことにした。タクシーで帰ろう。さっき別れた友人にLINEをすると、何事もなく家についたとのことだった。地下鉄は強い。

駅前のロータリーにタクシーは停まっておらず、大行列ができていた。甘かったか…。雪が降る中、ここに並ぶのはつらい。それならばと、24時間営業のネットカフェに行くもどこも満室。雪道をとぼとぼ歩いてると、一軒の中華料理屋が営業していた。スマホの電池が切れ、充電器も売り切れの中、コンビニで買った『テレビブロス』を片手に店に入った。お腹は空いてなかったけど、温かいラーメンを食べながら雑誌を読んだら、少し不安は和らいだ。しかし、1時に閉店。雪がどかどか降る中、また路頭に迷うことになった。

こうなると吸い寄せられるのは、駅前で煌々と輝くマクドナルドだ。24時間営業で、わずかにカウンター席が空いていた。このまま電車が動くのを待つしかない。最悪、始発までか…と、座席にバッグを置いたそのとき、目の前のガラス越しに、今まさに客を降ろしているタクシーが。これは逃してはならない! そう思い、一目散にマックを出て走った。

しかし、すんでのところでサラリーマンが先にタクシーに乗車。ああ、間に合わなかった…。でも、ここは勇気を振り絞って、間に合わせるしかない!!

「すみません。相乗りさせていただいてもいいですか⁈ ◯◯駅なんですけど」

突如現れた私にぎょっとしていたが、私の家の方面に向かうというで、相乗りを了承してくれた。やさしい人でよかった…! ゆっくりと進むタクシーの車内で雪に覆われた街を眺めていると、家の最寄りに到着した。

そこまでの代金を払い、お礼を言って降車。ひざ下まで積もった雪をのっしのっしとかき分けて家についた。ヘトヘトだった。玄関のドアを開けると、散らかしたままの呑気な室内が輝いて見えた。

この日を境に、天気予報や雨雲レーダーのチェックに余念がなくなった。